【田原】どこから風向きが変わりましたか。
【小沼】IBMの視察をしにアメリカに行ったときからですね。IBMはいろんな国の社員をチームにして、これからIBMが進出したい国のNPOに送り込み、現地の社会課題をICTで解決するというプログラムをやっていました。IBMは事業寄りで、僕たちが考えていたのは人材育成寄りですが、やっていることはほとんど同じ。IBMの取り組みを日本企業に伝えると、僕たちの留職プログラムにも関心を持ってもらえるようになりました。
【田原】具体的には、どんな会社が興味を示したのですか。
【小沼】パナソニックとテルモです。事例がテレビにも取り上げられて、問い合わせが増えました。
【田原】派遣を受け入れるNGOやNPOはどうやって見つけるの?
【小沼】実際に現地に飛んで話をしました。NGOやNPOを横でつなげるキーパーソンが各国にいるので、そういう人たちに協力してもらって、「こういうキャリアの人がいるけど、どこか受け入れられないか」と探すんです。いま、10カ国、800団体以上のネットワークがあります。
【田原】NGOやNPOからお金は取るんですか?
【小沼】取りません。留職した人の給料や渡航費、宿泊費は企業が払います。また、企業からお支払いいただく研修プログラムの料金が僕たちの事業収入になります。
【田原】これまで留職者は何人?
【小沼】派遣人数は127人、派遣国数は10カ国、約80団体です。留職期間は平均3カ月。
【田原】留職3カ月で、行って帰ってきた人の意識は変わりますか?
【小沼】変わります。たとえばたいへんなことがあると「嫌だな」といっていた人が「よし、やってみるか」と口癖が変わったり、いままで失敗しないように仕事をしてきた人が積極的にリスクを取りにいくようになったり。変わるのは、角度でいうとほんの1度や2度で、たいした違いはないように見えるかもしれません。でも、50歳になったとき、わずか1度の違いがその人をまったく別の場所に連れていくと思っています。