【田原】2011年にクロスフィールズを立ち上げます。パートナーになった松島由佳さんとは、どのような出会いだったんですか?

【小沼】就職活動で同じコンサルティング業界を受けていて、面接で一緒だったんです。僕がシリアでこんな活動をしてきたと話したら、松島もカンボジアでNPOの活動をした経験があって、同じことを考えていたことがわかりました。勉強会に真っ先に誘ったのも松島でした。

【田原】小沼さんは別の女性とご結婚されていますね。そんなに気が合うなら、どうして松島さんと結婚しなかったの?

【小沼】そんなにストレートに聞かれたのははじめてです(笑)。妻とは大学1年生のときからずっとつき合っていましたから。もちろん妻と出会っていなくても、松島と結婚したかどうかはわからないですが(笑)。

【田原】さて、小沼さんはクロスフィールズで何をやろうとしたのですか。

【小沼】「留職」プログラムを企業に提供しようと考えました。企業に勤めている人を海外に派遣して、NGOやNPOの活動に従事してもらうリーダー人材育成プログラムです。

【田原】留学ならぬ留職というネーミングがおもしろいですね。いつ名づけたんですか。

【小沼】創業した11年の初めです。

【田原】マッキンゼーの退社日が11年3月11日。ちょうど東日本大震災のあった日だった。

【小沼】震災が起きて大企業とのアポイントはすべて吹っ飛び、急にからだが空きました。このタイミングでからだが空いているのは何かの運命。東北のために何かしようと、南三陸や気仙沼に物資を届ける活動をしていました。2カ月ほどして、状況が少し落ち着いてからまた大企業へのアプローチを再開しました。

【田原】大企業の反応はどうでした?

【小沼】100戦全敗でした。海外のNPOで働くことの意義をうまく伝えることができなくて。100社以上回りましたが、取り合ってもらえないところがほとんどでした。

【田原】よく途中で嫌になりませんでしたね。

【小沼】100敗は痛かったですが、まず100試合できることに価値があると思っていました。じつは100試合組んでくれたのは友人たち。僕が会社を飛び出したのを見て、応援してやろうと自分の勤める会社の人事部を紹介してくれた。そうなると頑張らざるをえません。