山尾氏を見捨てた、民進党の女性議員
先に私は「女性議員はマイノリティーであるため本格的な政治家に成長できない」と述べました。侍女タイプやお姫様タイプの女性議員が実力派に脱皮しようとしてもうまくいかないケースが多いのですが、それは彼女たちが政治家として成長するプロセスをきちんと踏んでいないからなのです。このことは政治の世界では女性が圧倒的な少数派であることと関係しています。
たとえば自民党では、男性議員は国会議員のグループである派閥に所属し、先輩議員から教育を授けられ、やがて閣僚級を経て派閥を率いる長となり、総裁候補に擬せられ、首相を目指すというキャリアを歩みます。派閥とは俗な言葉で言えばサル山のようなもの。政治家たちは、そこでボスになるための切磋琢磨を経験します。
派閥を率いるために必要なのは、実務能力や演説のうまさや集金力だけではありません。人を押しのけるだけの人なら人望は集まらず、離反されるおそれがありますから、ボスザルを目指すには優しさや惻隠の情も必要です。サル山のなかで切磋琢磨を経験することで、男性議員は次第に人格を陶冶していくのです。
しかしマイノリティーである女性議員は、サル山のボス争いに加わることはありません。派閥のメンバーではあっても、主要メンバーとは少し離れた場所に置かれるというイメージでしょうか。このあたりの事情は、企業や学会など一般的な男性中心の組織と変わりません。
ボス争いをしないのは一面ではいいことでしょうが、人格陶冶の機会を持てないということでもあり、そのため女性議員の多くは、いざというとき困っている仲間へ手を差し伸べるような行動を取れないのです。山尾氏が不倫問題でメディアの集中砲火を浴びたとき、同じ民進党の女性議員から彼女を擁護する声がほとんどあがらなかったのは象徴的です。
優しさは女性一般の特徴だと思われています。実際に世間の女性は男性よりもはるかにこまやかな気遣いをしますし、「女性=優しさ」のイメージを持つこと自体は間違っていないと思います。ただ、国会議員などに抜擢される女性は、マイノリティーならではの頑張りを強いられる一方、サル山経験がなく人格を磨かれていないために、惻隠の情を持てない人がいるのです。
それが端的に表れたのが、豊田前議員のパワハラ問題でしょう。豊田氏は年上の男性秘書を「このハゲーッ!」と罵倒し、暴力を振るったとされています。女性が男性社会で出世するには、豊田議員がしていたように支持者のもとへ誕生日のメッセージカードを届けるといった地道な努力が必要だという一面もあるでしょう。その頑張りが空回りしてしまったのだという見方もできますが、こうした振る舞いやそれによる悪評は必ず外へ漏れ出ます。部下に対して惻隠の情を持てない人が衆望を集めることはありません。