こうした事業は、京都議定書によって規定されたCDM(クリーン・デベロップメント・メカニズム)と呼ばれるものである。発展途上国において温暖化ガスを削減する事業を行えば、その分の温暖化ガスの排出量を、京都議定書によって定められた削減量に加算できるという仕組みだ。京都議定書は、締約国である先進各国に対して、排出量削減という厳しい法的義務を課しているが、自国内の削減努力だけでは限界がある場合に備えて、CDMという柔軟措置を設けている。

ウルムチ市の国際大バザールを取材する黒木氏。

CDMプロジェクトには、風力発電や水力発電以外に様々なものがある。例を挙げると、(1)養豚場、養鶏場、炭鉱、ゴミ処分場、パーム油工場の廃液などからメタンガスを回収して発電、(2)代替フロンの一種であるHFC(ハイドロフルオロカーボン)22を製造する際に発生する副産物である温室効果ガスHFC23の破壊事業、(3)温室効果ガスであるN2O(亜酸化窒素)分解事業、(4)太陽光発電、(5)油田からの随伴ガス回収・有効利用プロジェクト、(6)コークス炉やセメント工場などの廃熱を利用した発電、といったものである。

各プロジェクトによってどれくらいの温室効果ガスが削減されたかは、「CDMプロジェクトがなかった場合に排出されていたであろう温室効果ガスの排出量」(これを「ベースライン」と呼ぶ)と、当該CDMプロジェクトで排出される温室効果ガスの量の差によって測定する。「ベースライン」の算出方法については、国連が定めた詳細な規定があり、それにしたがって国連あての申請書(PDD=プロジェクト・デザイン・ドキュメント)を作成し、承認の申請をする。

プロジェクトは、ホスト国などの承認手続きを経て最終的に国連(ドイツのボンにあるCDM理事会)によって承認されなくてはならない。プロジェクトが実施されて排出権が発生すると、国連によってCER(サーティファイド・エミッション・リダクション=認証排出削減量)が発行され、これが排出権(排出量)として取引される。

(黒木 亮=撮影)