40代の自己投資を50代で回収する
組織から離れるために意識してやっていたのは人脈づくりです。
勤め人時代、私は会社の人間とあまり飲みませんでした。つき合っても3度に1度。また、大学の学友ともほとんど会わなかった。昔を懐かしんでも先につながりません。それよりも、いままで会ったことのない新しい人と飲むほうがずっと役に立ちます。安いところばかりで飲んでいるのもダメです。いい人と知り合いたければ、少し背伸びして手金で高いお店に行ったほうがいいのです。
銀座は高い? そこでお金を惜しむ人は、いつまで経っても稼げる人になりません。私は「40代からお金を貯めるやつはダメ。50代でお金が貯まっていないやつは、もっとダメ」と言っています。いっけん矛盾しているようですが、40代で自分に投資すれば、50代でお金が自然に貯まっていきます。若いときにケチったり、お金をムダなことに使っているから、50代でお金に苦労するのです。
もうひとつ、お金に余裕ができたとしても、50代で守りに入ってはいけません。幕末の儒学者、佐藤一斎は次のように書き残しています。
「少くして学べば、則ち壮にして為すことあり。壮にして学べば、則ち老いて衰えず」
若いときに学べば大人になって何かをなすことができ、大人になっても学びをやめなければ衰えることがないという意味です。
私は50歳を過ぎても引き続き一流の店に通いました。ゴルフも一流のコースの会員になり、仕事と関係ない人たちとプレーしていました。小説家になろうと準備を始めたのは60歳を過ぎてから。10年かけて『信長の棺』を書き上げましたが、新人賞に応募しても評価されず、最初は出版社も相手にしてくれませんでした。そのとき、デビューに力添えしてくれたのが、社外で知り合った新聞記者だったのです。私が50代で自己投資をやめていたら、75歳でデビューを果たすことも、小泉純一郎元首相が愛読書だと公言してベストセラーになることもなかったでしょうね。