小遣い稼ぎをしたいと偽ブランド副業に手を染める

転職もままならず、独立はリスクが大きい。ならば、会社を辞める選択ではなく、給料で足りない分は知恵と工夫で稼いでみよう。趣味を活かしたり、ニッチな需要のある分野を探したりして副業をするなら、何らかの事情で会社をやめなければならなくなったときの”保険”にもなる。

また、本業が別にある安心感で、将来やりたいことに備え、小遣いを稼ぎながら経験値を上げることも可能。さまざまな理由で副業を持つ人が増え、それを勧めるハウツー書も出ている。

だからといって犯罪に手を染めるなんてあり得ない。

被告人は何を考えているんだ。読者はそう思うに違いない。でも、チケットの転売ビジネスなど、犯罪行為といっても、売る側と買う側の双方とも罪の意識が低い場合はあると思う。被告人も、最初は自分のために偽ブランド品を買ったのだが、使わないものを売ったらいくらかでも里帰り費用の足しになると思い、実際売れたためにその気になってしまったのだ。

大企業なら逮捕され罪を認めた時点で懲戒免職

社則で副業が禁じられているけれど、バレなければいいだろう。ネットでやっている分には問題ないだろう。そうだ、バレるはずがないよ……。すべて仮定の話だ。この副業はどうだろう、スレスレかなと思うようなときは、発覚したらどうなるかを想像してから「やる、やらない」を決めたほうがいい。

実直な勤め人だったのに、つい調子に乗ったばかりに犯罪者になってしまった被告人。すべての信用も職も失ったのかと思ったら、そうではなかった。証人として出廷した雇用会社の社長が言う。

「被告人とは30年もの間、苦楽をともにしてきました。どんな男かもよく知っています。金銭に関する相談を受けたことがなく、最近は私生活に関することも詳しくは知りませんでしたが立ち直ってもらいたい。彼の家族とも話をし、皆で頑張っていくとのことでしたので、今回のことで会社を辞めてもらおうとは思っていません」

被告人は初犯で、反省もしている。執行猶予付き判決になるのは確実だが、すでに40代後半で、仕事を失えば大変な思いをする。社長にしてみれば、それがわかっていて首を切るなんてできないということだろう。

雇用を続けることは更生にも直結する。被告人は社長に対する感謝を忘れず、今後犯罪に手を染めることはないと思う。まあ、だからといって給料が上がるとも思えないが、奥さんが働きに出ることで収入アップは見込めるはずだ。

でもこれは、小さな会社だからできたことでもある。

大企業ならどうだったか。筆者が見てきた裁判では、逮捕され、罪を認めた時点で一発退場。懲戒免職になるケースがほとんどだった。

犯罪でなくても、わずかな副収入を得るために、社則を破ったとして社内での立場が悪くなれば本末転倒である。そこに注意するのは当然だが、たとえ社則でOKだとしても黙っているのが賢明だ。間違っても、酒席などで「そこそこ儲かっている」などと自慢してはならない。解禁される動きのある副業だが、これを快く思わない幹部社員はいくらでもいる。給料以外でも稼いでいると思われたらどんな仕打ちが待っているかわからないのだ。

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