一見無駄に思えることが必要な理由

イノベーションを起こすために、社内だけでなく、社外のアイデアや技術なども積極的に取り入れていくオープンイノベーションの取り組みが広がっています。その観点で、私が注目する事例を2つ紹介しましょう。

1つは、富士通デザインが2014年に開設した「HAB-YU platform」です。オープンイノベーションを行うための場所をつくる企業は数多くあるものの、この施設がユニークなのは、歩いていけるすぐ近くにDIY工房を併設していることです。そのため、何かいいアイデアを思いついたら、すぐに製品のプロトタイプをつくることができます。対話の中で、せっかくいいアイデアが生まれても、そこで途切れてしまうと、そのときの熱は冷めてしまうことが多いものです。「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、アイデアが生まれたら、そのまますぐに形にしてみる、という流れが大切だと思います。

もう1つは、富士ゼロックスの「お客様共創ラボラトリー」です。同社は10年、それまで分散していた研究開発拠点を1カ所に集約し、そのビル内に、顧客企業との共創によって新たな価値を創造するための場として同ラボを開設しました。ラボでは、富士ゼロックスの実践事例をもとに、顧客との対話を通じて経営課題を明らかにし、新たなビジネスの創出を目指します。

このラボで注目している点が2つあります。1つは、各参加者がタブレット端末で電子的な付箋に意見を書き込み、それを電子ボードで共有できるようなツールを取り入れていることです。複数の人が集まって議論を行う場合、発言は特定の人に限られてしまう傾向があります。しかし、このツールを利用すれば、発言していない人も意見を出すことができ、その中でいいアイデアがあれば、ファシリテーターが取り上げて膨らませることができます。

もう1つは、顧客との共創でいいアイデアが生まれたときに、上階からその内容に詳しい研究者を呼んで議論に参加させることができる点です。富士通のDIY工房もそうですが、生まれたアイデアをすぐに具現化できるような機動力(アジリティ)が、イノベーションを実現するうえでのポイントと言えます。

イノベーションの素となるアイデアは、いつ生まれるか予測することはできません。その機会を逃さないことが、イノベーション業務では重要になります。そのためには、他部門や社外の人と積極的に対話するなど、一見無駄に思えるようなこと(冗長性)が必要になります。オペレーション業務では、物事を計画的に進めて、無駄を省くことが重視されてきました。しかし、イノベーション業務では、その考え方を改め、さまざまな人と対話の「場」をつくり、そこから偶発的に生まれたアイデアを形にしていくことが大切です。

(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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