ヒットを生み出す企業には、アイデアを生み出す場づくりの知恵があった。ああ、こんなオフィスで働いてみたい──。

「島型オフィス」では何が問題なのか

どうしたら誰も思いつかなかった新しいアイデアは思い浮かぶのか──。ビジネスマン共通の悩みでしょう。ピカピカのきれいなオフィスをつくっても、IT企業のおしゃれなオフィスをただ真似したとしても、それだけでアイデアは出ないもの。アイデアが出たからといって、イノベーションを起こせるとも限らないものです。

従来の企業は利益の最大化を目的とする思考プロセスをとってきました。組織はピラミッド型で、指示・命令・報告によって動き、情報は会議によって伝達されていました。オフィス空間もそれに合わせて構築され、たとえば机は組織図に沿ってレイアウトされました。そこで働く人々の行為は、主に読み書きそろばんからなるデスクワークが中心でした。商品に機能をたくさん付けたり値下げしたりしてモノが売れていた時代には、企業はこのスタイルでも機能していました。

これがうまくいかなくなるとイノベーションが大事と言われ始めました。しかし、これを従来の働き方で実現するのには限界があります。Googleやフェイスブックなど、世界で躍進する企業は生活者の視点から本当に求められているニーズに気づき、それをみんなで共有しながら新しい商品やサービスを生み出すことに取り組んでいます。

そうなれば、人々のオフィスでの行為も、デスクワークというよりいろんな場所を動きながら体験や共有、対話をするといったことが大切になります。

行為が変われば、空間も従来のオフィスとは異なったものに変わらなければなりません。そのとき重要なポイントはピラミッド型の組織階層をぶっ潰し、人々がフラットな関係を結べるようにすること。人々の関係性を新たにデザインするのです。

そのためには、どんな工夫ができるでしょうか。

ひとつはオフィスの外に飛び出し新たな経験や出会いをすることでしょう。外部の人を招き入れて新しい視点を得ることもよいでしょう。そこから気付きを得て、それをみんなで共有したり対話したりしながら「求められているのはこういうことではないか」と仮説を立て、試行錯誤するなかでイノベーションは生まれます。組織を超えた出会いを促し、思いついたアイデアはすぐに表現、可視化して埋もれないようにする。さらに、それを見て面白いと思った人が付け足せるようにするといった工夫も効果があるでしょう。