マイホームを購入したい! と思ったとき、どんな基準や条件で選べば正解か? その答えは、都心はもちろん、郊外や地方でも「駅近」となる。生活が便利になるだけでなく、売却するときにも「資産価値」が下がりにくいからだ。年々顕著になる「駅近」人気の一人勝ち現象。目下の状況と今後の展望を、不動産のプロがずばり解説する――。
走るゆりかもめと新豊洲周辺のビル群(写真=アフロ)

1分ごとに「平米1万8000円」下落!

住まいの購入は人生最大の買い物。それだけに、選ぶポイントも多岐に及ぶ。その中の一つが「資産価値」という観点。その価値が上昇すれば万々歳だが、逆に下がりにくい物件を選ぶコツはあるのか。

「ここ数年、顕著な傾向として、“駅近”物件がより求められるようになっています。目安としては、マンションなら駅から徒歩7分以内、一戸建てなら15分以内が絶対条件です。

中古マンションの成約単価が、駅から徒歩1分離れるごとにどのくらい下がるかのデータがあります。それによると、東京都心の中央区、千代田区、港区、新宿区、渋谷区、目黒区、品川区では、2013年は1平米8000円でした。それが5年後の18年5月には1万8000円になっています。7分を超えて時間がかかるほど、下落率も大きくなるのです。

これはマンションだけでなく一戸建てでも賃貸でも、あるいは、完全な車社会が形成されている地域を除けば、首都圏でも地方都市でも同様の傾向があります」

なぜ、駅近に対するニーズがこれほどまでに先鋭化しているのか。大きく二つの理由があるという。

「一つは、今の30代以下の若い世代は車の保有率が低くなっていること。もう一つは、共働き世帯の比率が高いこと。とくに共働き世帯の比率は今後もますます高まるでしょう。そうなると、移動手段は電車がメインになり、何より時間が大事という価値観が優先されます。だから徒歩15分の70平米より徒歩3分の50平米のほうを選ぶわけです。

また都心の駅近エリアでは、10平米にも満たないような賃貸住宅が一人暮らしの人から人気を集めています。たしかに狭いけど、普段テレビは家で見ないから置く必要がないし、人を招くわけでもなく、料理もしない。『寝に帰るだけ』であれば、北千住の20平米で8万円より、渋谷の9平米で8万円のほうがいいと考えるようです」

かつてバブルの時代であれば、夢のマイホームを取得するため、都心から離れた隣県郊外の駅からバスを利用しなければならないような地域にもマンションや戸建て住宅を求める向きがあった。しかし、それも今は昔のようだ。

「そのような地域では、中古マンションの価格が1000万円を切るにもかかわらず、取引自体がほとんどなくなっています。買う人がいないからです。同じ地域で、価格2000万円前後、月々5~6万円のローンを支払えば、新築一戸建てが買えるのですから。

一方、最近分譲された神奈川県海老名市の駅近タワーマンションは、約70平米で5000万円前後という、かなりの高値であるにもかかわらず人気が高くどんどん売れています。こうした現象は海老名市だけに起きていることではありません。かつて郊外の駅から徒歩20分以上かかるところに一戸建てを購入した人たちが、それを売り払って駅前や駅直結のタワーマンションを購入するという動きが活発化しています。

どの地域でも、駅周辺だけはものすごく高くて、そこから離れるに従って底なしに下がっていくという二極分化のイメージです」