医療であれ、流通であれ、生き残るには「選択と集中」が欠かせない。「総合」であることが大きなハンディキャップとなる。
流通業界では、専門店が発展するとともに、国民の多様化したニーズに併せて、コンビニや宅配サービスが発達した。
強いニーズは「名医」より「便利さ」
コンビニ業界の売り上げは、91年から現在までに約4倍に増えた。総合百貨店とは対照的だ。同じ事が医療界でもおこるはずだ。既に萌芽は認められる。
前者の代表は、立川・川崎・新宿の駅ナカで営業するナビタスクリニックだ。私も毎週月曜日に新宿で診察している。
このクリニックは、平日は午後8時まで、土日は午後2時まで受け付けている。新宿駅で乗り換える人だけでなく、新宿の「駅ナカ」で働く人たちも受診する。「平日日中にはなかなか病院に通えない」と話す人が多い。
患者たちは「名医」や「丁寧なサービス」以上に「便利さ」を追求する。ナビタスクリニックは、このニーズを捉えている。患者数は3つのクリニックを合計して、1000人を超える日も珍しくない。
ナビタスクリニックを率いるのは久住英二医師だ。もとは骨髄移植の専門家だった。先端医療から転身したことになる。
くりかえすが、大学病院は高度医療に重点を置いてきた。一方、医療界に求められるのは、患者の価値観に併せて、多様なサービス提供方法を確立することだ。久住医師は、このような時代の変化にうまく対応した。従来型の「専門医」と比較して、今後、彼らのような「専門医」のニーズが高まる。「専門医の在り方」はもっと柔軟に考えるべきだ。
改革を阻む大物大学教授たち
話を戻そう。新専門医制度は迷走している。当初今年4月から新制度を実施する予定だったが、若手医師や全国市長会から「地域医療を崩壊させる」と反発され、さらに厚労省では塩崎恭久・厚労相が主宰する検討会が立ち上がった。
7月21日には、有志の医師らで構成する『専門医制度の「質」を守る会』(代表:安藤哲朗・安城更生病院副院長)が、塩崎厚労相あてに、1560人の署名を添えて、新専門医制度に反対する意見書を提出した。機構にとって、完全な逆風だ。
ところが、機構は来年度からの制度開始を強行するようだ。
機構とは、大物大学教授の集まりだ。ホームページをご覧になるとお分かりいただけるが、理事の大部分が大学教授か経験者だ。彼らの利益を代弁する集団と言っていい。