確かに市場では行きすぎることがあり、株や債券が下がりすぎているとの見方もある。しかし、サブプライム問題で注目されているように、下落前の市場が過剰な信用の創出のもとに成り立っていたことも確かだ。それにもかかわらず、下がっているときだけ「異常」とするのは、あまりにもご都合主義とはいえないか。
振り替えを行った場合には、バランスシートに2008年10月1日以降の価格で計上することになる。同日の日経平均株価(終値)は1万1368円。その後、1万円を割り込み、1月末時点では7000円台に転落している。仮に時価が8000円とすれば、少なくとも2000円超の評価損が隠れてしまう。
BIS(国際決済銀行)規制などのしばりやその他の事情から、財務健全性を形のうえだけでも維持しなければならないという企業側の事情は確かにあるかもしれない。銀行がこれまでどおりの会計基準を用いた場合、保有する有価証券の含み損が増大し、自己資本比率が低下する。金融システム不安を起こさないためには自己資本比率の維持が不可欠であり、そのためには評価ルールを変える必要があった、というわけである。
しかし、ルールが頻繁に変わったのでは財務基盤や収益性などの推移を知ることができない。会計基準には一貫性を持たせ、企業の財務状況をガラス張りにするのが本来あるべき会計の姿ではないか。
欧州のIASB(国際会計基準審議会)が金融危機による緊急措置として会計基準を変更したが、これに追従するように、日本でも導入された。日本が迎合しなければ、会計についての発言力を増すこともできたはず。“ラストサムライ”になり損ねたわけで大変残念だ。