1億円で取得した用地が保有中に2億円に値上がりした場合、1億円として評価するのが「原価主義」、2億円と評価するのが「時価主義」である。

時価主義は、利益が確定していないのに利益を得たように見え、楽観的な評価になりがちという懸念があるものの、損失が適宜反映されるという利点もある。対して原価主義では、実際には生じていない利益は計上されない慎重さがある半面、損失が隠れやすい問題がある。

どちらも一長一短で、時代によって都合のいいほうが採用されてきたという経緯がある。と、ここまでは前回のおさらいだが、今回はサブプライムローン問題に揺れる中、新しい“ご都合主義的なルール”が導入され、大きな問題になっていることを指摘したい。

問題が大きい新ルールの導入

問題が大きい新ルールの導入

それは企業が保有する有価証券に対する評価方法についての特別措置だ。企業が保有する有価証券は、会計上(1)売買目的、(2)満期保有目的、(3)子会社・関連会社株式、(4)その他有価証券の4つに分類される。(2)と(3)は売買を目的とするものではないため原価で評価され、残りの(1)と(4)は時価評価が基準となっている。

しかしご存じのとおり、昨年来の金融危機によって、株式も債券も大きく値下がりしている。そこで一定の要件を満たせば、売買目的やその他の目的で保有した証券を、満期まで保有する目的の証券に振り替えることを可とする、というルールが昨年12月に導入された。時価評価を原価評価に変えられることになったのだ。当面、来年3月までの適用である。

なぜこのようなルールが適用されることとなったのか。それは「流動性の低下など、市場が正常に機能していないから正しい時価評価にならない」という考え方が前提になっている。でも、これはおかしい。市場が閉鎖されているならともかく、市場では売買が行われている。市場でついた価格は、市場の合意のもとに形成された「時価」であり、これを無効とするのでは理屈がとおらない。