経済統計は「小数点第2位」までみる

なお、最近、詳細にみると、新聞の見出しとは異なった面が見える統計が多い。たとえば、「3月分の完全失業率は2.8%で低水準ながら2月分と同水準にとどまった」というのが一般的な見方であろう。

しかし、小数点第2位までみると1月分で2.95%、2月分2.84%、3月分2.75%で、ほぼ0.1%ずつ毎月着実に低下しているのである。2.8%は94年6月分以来だが、2.75%としてみると93年11月分の2.74%以来の低水準になる。

また、3月調査の日銀短観、大企業・製造業・業況判断DIは+12で、先行きが+11に低下している(図表3)。このため新聞報道では「海外の政治情勢などが見極めづらく、先行きには慎重な見方も根強い」とやや悲観的な見方が書かれていた。

ここで内訳をみると景色が変わってみえる。製造業は素材業種と加工業種の他の項目はなく2つに分かれる。素材業種と加工業種の現状の業況判断DIはともに+12である。製造業全体の業況判断DI+12と一致する。先行きの判断DIは素材業種と加工業種ともに+12で現状と、どちらも変わらない。しかし、両者を合わせた製造業は+11に低下する。「慎重な見方も根強い」と書くほど実態は弱くはないかもしれない。

「粗大ゴミ」でテレビ需要がわかる

1作業日当たりの粗大ゴミ(東京23区清掃一部事務組合)の前年同月比の推移(図表4)をみると、戦後1番目の長さの「いざなみ景気」の景気局面の終盤の06~07年にプラスの山がある。その後08年のリーマン・ショックの後に09~11年にかけて大きなプラスの山がある。そして消費税引き上げにより、14年~15年にかけてマイナスの谷がある。しかし駆け込み需要が出てもおかしくなかった13年には大きな動きはない。

粗大ゴミの動きは耐久消費財の動きを裏面から見るようなものだ。09年~11年にかけ家電エコポイント制度が実施され、家電合計で約4500万件、中でもカラーテレビは約3,200万件の申請があった。カラーテレビの平均使用年数は8~9年程度のようだ(図表5)。

今年3月の調査では約3分の2が故障による買い替えだ。09~11年に需要の山があったと考えると、今年や来年あたりからカラーテレビの買い替え需要が出てきて景気の下支え要因になりそうだ。

宅森昭吉(たくもり・あきよし)
三井住友アセットマネジメント 理事・チーフエコノミスト。三井銀行(現・三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできており、最近では政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。
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