朝日新聞は“プライド高めのおじさん”

――ただ、そんな日刊ゲンダイの煽情的な主張には批判もあります。

本にも書きましたけど、以前、ゲンダイの中の人にお会いしたときに「なんでいつもどぎつい論調で、派手な色使いなんですか?」って聞いたら、「過激な見出しに興味を持った人に買ってもらいたい」とか「電車の窓ガラスに映った見出しを周囲の人が見てギョッとすればいい」って。だから、そういう戦略があるんですよ。

――ほとんど「アジビラ」ですね。

そう。だから「ゲンダイ=永遠の学生運動」と思って読むと、すごく味わい深いんですよね。

――鹿島さんはほかの新聞も「キャラ」として擬人化しています。たとえば朝日新聞は“高級な背広を着たプライド高めのおじさん”、産経新聞は“いつも小言を言っている和服のおじさん”。つまり、各紙はそういう「キャラ」や「芸風」で売っているんだから、そこに怒るよりも、その違いを楽しもう、という提案ですね。

たとえば政治の話題では、「安倍政権が好きか嫌いか」で、感情と感情がぶつかりあうことが増えているように感じます。でも、そうやって感情的に反発するよりも、各紙を読み比べて「同じ事件を扱っているのに、なぜこんなにも切り口が違うんだ?」と違いを味わったほうが楽しいと思うんです。朝刊紙で言うと、朝日新聞と読売新聞、あるいは東京新聞と産経新聞の違いがわかりやすいですよね。

――朝日と東京が「左派」、読売と産経が「右派」という違いですね。

左と右どちらの論調もあっていい。たとえば森友学園問題では、安倍政権に肯定的な読売や産経の報道を追っているほうが面白いんですよね。「あ、やっと書きだしたな」とわかるからです。つまり、2月9日に、朝日新聞が初めて森友学園のことを記事にしたんですけど、その9日後ぐらいに読売も書きだした。これは問題が大きくなりすぎて、読売も「書かざるを得なくなった」と受け止めました。しかも、そんな読売の報道のほうが読んでいてわかりやすい。批判的な朝日や毎日、東京新聞もいいんですけど、あれもこれも問題視するから。

――論点も複雑になってしまう。

そう。それよりは政権に近い新聞を読んだほうが、皮肉なことに、いま政権にとって何がやっかいなのか、問題の本質が浮き彫りになるんですよね。これはあくまで僕の見立てですけど、読売は社説でも国有地売却の件を問題視している。逆に言えば国有地売却は問題だと認めざるを得ないので、やはりここがひとつ大きな論点であるということがわかります。政権寄りの新聞は騒ぎを大きくしたくないから、淡々と書くしかない。感情的ではないから、読む側としても論点を整理しやすいんです。