これから構造改革の真価が問われる

鈴木氏に退任を迫られながらコンビニエンスストア事業のセブン-イレブン・ジャパン社長から昨年5月に鈴木氏の後任としてセブン&アイHD社長に就いた井阪氏は、今回のグループ事業会社のトップ人事を含めた一連の人事で、人事刷新を終える。グループの新経営体制への移行を踏み台に、懸案の構造改革を加速させたい意向だ。

井阪氏が社長就任から人事刷新を終えるまでにほぼ10カ月という長い期間を掛けた背景には、内紛によりカリスマ経営者としてグループ内で圧倒的な求心力を持っていた鈴木氏が退陣した事実を非常事態として重く受け止め、社内融和を重視した面がうかがえる。

しかし、グループ人事刷新による新体制のスタートで、構造改革が一気に加速するかは依然、不透明さが残る。昨年10月に発表した構造改革案は道半ばであり、百貨店事業、総合スーパー事業の立て直し策は急務だ。実際、16年3~11月期の連結決算は、主力のコンビニ事業は好調だったものの、スーパーや百貨店の減損損失が膨らんだ結果、最終利益は前年同期比40%減の755億円と落ち込んだ。

相変わらずコンビニ事業と金融事業に依存した収益構造にあり、創業家回帰を強め祖業であるヨーカ堂の不採算店舗の閉鎖で手を緩めるようなことがあれば、構造改革に遅れが生じかねない。井阪氏は社長就任時、「グループが一枚岩になっていく」と強調し、グループ一体となった経営を目指す方針を掲げた。その意味で、グループ人事を終えたいま、井阪体制が構造改革の真価を問われるのはこれからだ。

(宇佐見利明=撮影)
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