「脱・鈴木」で井阪体制を固める
セブン&アイ・ホールディングス(HD)は3月1日付で、グループ事業会社のトップ人事を刷新する。井阪隆一社長にとっては昨年5月の就任後に打ち出した本格的な人事であり、「創業家の反乱」でカリスマ経営者、鈴木敏文氏が去った後、人事面で「脱・鈴木色」を鮮明にし、いまだ道半ばにある構造改革を加速するのが狙いだ。
典型は祖業である総合スーパー、イトーヨーカ堂のトップ人事で、昨年1月、鈴木氏に請われ顧問から再登板した亀井淳社長が退任する。また、ファミリーレストラン「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズの大久保恒夫社長も退く。亀井氏は2014年までヨーカ堂の社長を務め、大久保氏はヨーカ堂在籍時に鈴木氏の直属の部下を務め、ともに鈴木体制を支えてきた。それだけに、両氏の退任はグループからの鈴木カラーを一掃し、井阪体制を固める意味合いが濃い。
両社の後任社長には、ヨーカ堂が三枝富博常務執行役員、セブン&アイ・フードシステムズは小松雅美取締役執行役員がそれぞれ昇格する。三枝氏は1997年の中国・成都へのヨーカ堂出店に計画当初から参画するなど、中国での総合スーパー事業を成長に導いた実績があり、ヨーカ堂社長就任後も中国事業部管掌を兼ねる。小松氏はデニーズジャパン(現セブン&アイ・フードシステムズ)の生え抜きで、レストラン事業部長としてデニーズの運営を担ってきた。両氏はともに業績不振からの脱却が喫緊の課題となる。
一方で、井阪体制は人事面での創業家回帰もにじませた。創業者、伊藤雅俊名誉会長の次男で、昨年12月にセブン&アイHDの執行役員から常務執行役員に昇格した伊藤順朗取締役経営推進室長は3月1日付でヨーカ堂の取締役も兼ねる。セブン&アイHDを約25年にわたって率いてきた鈴木氏が退陣する発端となった創業家と鈴木氏の確執に伴い、昨年12月には鈴木氏の次男で取締役だった鈴木康弘氏が退任しており、内紛を象徴する対照的な人事となった。