製品の販売から、課題解決型ビジネスへ
振り返れば、ファイアストン買収から今日まで、ブリヂストンは一気に拡大した事業の立て直しと世界に広がる組織の統治体制の確立に奔走してきた。レースで輝かしい実績を残し、売り上げでも世界1位となりながらも、果実の甘さを味わう暇はなかった。その後、粘り強い努力でようやく最大市場米国でトップを制し、自社の売り上げの半分を稼ぐまでに成長させた。
ただし、前途は甘くない。米国に次ぐ2番目の稼ぎ頭である日本市場は今後大きな成長は見込めないし、3番目の欧州市場は依然、宿敵ミシュランの後塵を拝している。新興国でも、安価な値段を武器にする新興国メーカーとの競争は厳しさを増している。そうしたなかで、ブリヂストンが「断トツ」を狙うために打ち出した重要戦略の1つが、ソリューション型ビジネスモデルへの転換だ。今年1月、鉱山・農機ソリューションカンパニーを創設し、グローバルに展開することを発表した。
「我々は、他社が簡単に真似できないビジネスモデルをつくり上げていかなければならない」と津谷は言う。意識するのは、自社商品を複合的に組み合わせ、顧客の抱える課題とまだ顕在化しないその先のニーズに対応するソリューション型のビジネスだ。
ブリヂストンではタイヤ以外にも、ベルト、ホース、耐震ゴム、ゴム製の屋根材、シートパッドなど非タイヤ製品を幅広く生産している。そこで、例えば鉱山向けビジネスにおいて、作業車のタイヤのほか、ゴムホースやコンベヤベルトなどのブリヂストン製品を、顧客の採掘現場に最適な組み合わせで管理・メンテナンスをすれば、顧客の維持管理コストを大幅に削減できる。