高齢者に「免許証を返納させる」唯一の方法
高齢者の性格や気分に合わせた最適な言葉のかけ方がありそうですが、その見極めにはかなりの“スキル”が求められます。当面、効果がありそうなのは下記のような意見でしょうか。
「次に出た意見は、かかりつけ医に頼んで説得してもらう方法です。家族の意見には反発しても、専門家が説得すれば納得する人がいるからです。でも、“自分は大丈夫”と思い込んでいる人はそれも無視するはず。結局、説得でクルマの運転をやめてもらうのは難しく、解決策は免許更新のハードルを高くするしかないという結論に達しました」(Mさん)
ちばみに、現行の高齢者の運転免許更新規定は次のようなものです。
●70歳から74歳までは通常の免許更新手続きとは別に高齢者講習の受講が必要。
高齢者講習の内容は、
1:適性検査 ドライブシミュレーターを利用した動体視力などの測定
2:座学 ビデオなどで交通ルールの再確認
3:実車教習 指導員から運転技術のチェックを受ける
4:ディスカッション 実車教習のアドバイスなどを受ける
●75歳以上はこれに加えて認知症をチェックする「講習予備検査」を受ける必要がある。
また、これに2016年3月に施行される改正道路交通法では、交通違反の有無に関わらず「認知症の疑いあり」と判断された75歳以上の運転手には医師の診断が義務づけられ、「認知症の疑いがある」または「認知症を発症している」場合は免許を停止することができるという規定が加わった。
しかし、とMさんは語る。
「高齢者講習で実車教習が行われるのは評価できるのですが、問題は運転免許を取る時に受ける“実地試験”とは異なり、受けた人は運転ミスをしても修了証が貰え、免許の更新ができてしまうこと。要は甘いんです。クルマは凶器になり得るもので、その危険を防ぐために免許取得の試験に合格する必要があるわけですよね。高齢者講習でも同等の“試験”を行なうべきです」
また、75歳以上の講習予備検査(認知機能検査)は3年に1度。認知症はもっと短い期間で発症・進行することがあるので、検査ペースとして100%正しいとは言えない、とMさん。
「そんなことを考えなければならないほど、認知症ドライバーの危うさは早急に対策を講じなければならない切実な問題になっているのです」
警察庁の統計によれば、2015年末の70歳以上の運転免許保有者数は約775万人。厚労省の65歳以上の7人に1人が認知症患者というデータに当てはめれば、100万人以上の認知症ドライバーがいることになります。
高齢でもクルマを運転しているのは元気な方でしょうし、年間30万人近い免許自主返納者もいるので、その補正はしなければなりませんが、それでもかなりの数の認知症ドライバーがいるのが現在の日本。Mさんのように、それを想定するという自己防衛はもちろん、対応策を考える時期にあることは確かなようです。