自分の思いを商品化するのが基本
北星鉛筆は鉛筆に興味を持ってもらうため、30年も前から工場見学を積極的に受け入れ、近隣の小中高校では親子二代で工場を見学しているほどだ。2010年には鉛筆学習施設「東京ペンシルラボ」を開設。工場見学の後、粘土遊び体験もできる。年間1万人以上が見学に訪れている。
この工場見学から「大人の鉛筆」が生まれた。あるとき、子供と一緒に訪れた母親が「大人が使いやすい鉛筆があれば、ぜひ買いたいです」と言ったのだ。杉谷は当初、子供向けに鉛筆芯のシャープペンを考えていたが、その一言で方針を転換。大人向けに変えた。こうした思い切りのよさが杉谷の強みだ。
「目で見て商品を企画すると物真似や後追いになります。自分の思いを商品化すると新しいものができる。それがもの作りの基本ではないでしょうか。機能や性能より精神こそが大切です」
2016年3月にはパイロットと業務提携を発表した。北星鉛筆の鉛筆関連商品とパイロットのボールペンやシャープペン商品がお互いに補完しながら海外に乗り出すという。メイドインジャパンの鉛筆は東南アジアでまだまだ必要とされている。
杉谷は現在、芯が減らない(減りにくい)鉛筆を開発中だ。鉛筆で同じ太さの線を引けないかという漫画家の要望に応えるためだという。北星鉛筆が健在な限り、鉛筆はまだ成長産業である。
(文中敬称略)
●代表者:杉谷和俊
●設立:1951年
●業種:鉛筆など筆記用具、おがくず粘土・絵の具の製造販売
●従業員:28名
●年商:4億2000万円(2015年度)
●本社:東京都葛飾区
●ホームページ:http://www.kitaboshi.co.jp/