トンズラこいた夫の承諾なしに売却できない
すると、ほどなくして金融機関から共同担保の持ち主である夫の母親の元に返済請求が届いた。
担保権が設定されている以上、残債を一括で返済しないと競売は避けられない状況になってしまったのだ。夫の母親は自分の息子の不始末だからと自宅を売却してM子さんたちが住むマンションの住宅ローンの返済に充てようとしたが、なんと母親名義の家は失踪した息子(夫)が10分の1の名義を持っていることがわかったのだ。
母親も専業主婦で、不動産に関することは亡き夫に一任していたので、この段階になって初めて自宅が息子との共有名義であったことを知ったのである。こうなれば、母親の家も失踪した夫の同意がないと売却することができない。
まさに八方塞がり。
M子さんは、「住宅ローン問題支援ネット」主宰の高橋愛子氏のもとに相談にきた。彼女はすっかり落ち込み、大粒の涙をこぼしながら、こう言った。
「夫の母と私であちこちからお金を集めてローンを払っていたのですが、もうどうすることもできません」
しかしこの場合、どちらかの家を競売にすることは避けられなかった。マンションは失踪した夫の名義のため、夫の同意がないと売却することができないからだ。
さらに、マンションが競売になっても、それでローンの残債を全額返却できないとなると母親の家もいずれは競売になる。
そこで高橋氏は、M子さんと共に債権者(銀行など)に頼んで母親の家を競売にしないで欲しいと交渉。その代わり、マンションは早急に競売にしてもらい、1700万円で落札された。
残債は延滞金などを合わせて約600万円。それを分割払いすることで合意した。母親の家の競売を待ってもらうことができたのだ。