資本主義の隙間を埋めるのは「悲劇」である
さて、最後に、トランプ大統領という異端の政権が実現することの歴史的な意義について考えたいと思います。思うに、トランプ大統領の最大の歴史的使命は米国の民意を更新することです。安全保障の分野で米国が覇権を維持するためには、米国民の納得が必要です。北大西洋用条約機構(=NATO)にせよ、日米安全保障体制にせよ、国際社会の平和と安定の核を次世代以降も持続するためには、これらの諸制度についての米国民のコミットメントを更新しなくてはいけません。それは、実は、トランプ大統領にしかできないことだったのかもしれないと思っています。
経済分野では、自由主義的な経済秩序の維持です。一部では、反グローバリズムのうねりが起きているなどと安直な物言いがなされていますが、それが本当だとすれば現代にとっての最大の危機です。1930年代の経済的苦境が世界戦争にまで至ったことには、国際経済に対する不信任が広がり、資本主義に対する絶望が広がったからです。資本主義が信任を失った隙間を埋めるものが何か、その悲劇は歴史が繰り返し証明しています。トランプ大統領は、果たして資本主義に対する民意の信頼を回復できるか。
トランプという異端のリーダーに米大統領職を託すことには当然リスクが存在します。しかし、我々はそれよりももっと大きなリスクに直面していることに気が付くべきでしょう。