気迫に引きずられて攻撃に加わる市民

トランプやルペンが目立つことから、「ポピュリスト」とはすなわち「反移民」政策を掲げる人物だと受け止められがちだ。しかし、それは大きな間違いである。彼らの目的は、基本的に政策にはないからだ。もっと手前の、政策以前の場所で感情に訴えかけるのが彼らの得意技である。その結果、人々が難民を「敵」と見なせば、彼らの目的は達成されるのである。

それに、ポピュリストが常に移民を標的としてきたわけでもない。フランスの国民戦線を例に取ると、「反移民」を前面に出すようになったのは1980年代も半ばになってからであり、1972年に創設されたこの政党の初期の資料を見ると、移民のことなど何も問題にしていない。この政党は結党から10年ほどの間、戦う相手として共産主義とソ連を選んでいた。当時、西側社会にとってソ連はわかりやすい敵であり、移民以上に恐怖を与える存在だった。逆に、移民は経済発展を支える有り難い人々として歓迎されたのである。

ソ連であれ移民であれ、敵を定めて突進するポピュリストの特性を、ここでは仮に「ドン・キホーテ症候群」と名付けてみたい。スペインの国民作家セルバンテスが描くドン・キホーテは、風車を敵と定めて突進する。彼の意識の中で、風車は巨人が姿を変えたものであり、打ち倒すべき敵となっていた。現実には、風車は風車である。単なる風車をいかに手強い敵として描けるかは、ポピュリストの才能次第なのだ。

端から見ると、ドン・キホーテの振る舞いは、どうしようもない滑稽な姿に過ぎない。しかし、その気迫に引きずられて攻撃に加わる市民もいるのである。攻撃される風車にとっては、たまったものではない。

(ロイター/アフロ=写真)
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