「ブランドの進化」経営を推進する4つのポイント

谷井農園のオフィス。

時代を超えて求められる企業になるには、
(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション
という11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することだ。

進化経営の詳しいプロセスは、既に上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(6)ブランドの進化に取組んだ谷井農園の事例から、製造直販とブランド価値向上の取組みから、全体最適を図って進化していくポイントを4つ抽出する。

(1)他社と同質化しないモノづくりと販売方法

谷井農園では化学肥料や農薬を使用せず、生態系を支える土の質を高める独自の有機栽培など独自のノウハウを生み出し、口にすれば誰もが認める美味しいみかんづくりに成功した。またジュース搾り機などの製造機械の選択にも他社にない独自性を発揮し、同社の価値をさらに高めた。

販路は果物の姿形が悪いと扱わない農協系ルートでなく、価値を求める個人顧客を開拓するため、独自販路として通信販売に早くから取組んだことも同社の価値向上につながっている。

(2)品質に裏付けられ希少性により独自の高価格設定を実践

手間隙掛けて栽培したみかんなどの果物の商品力に、小規模農園のため生産量が限られている希少性が加わり、商品の価値と品質に見合った高価格に設定することができた。

(3)いち早く取組んだ農業の六次産業化

従来の農家は農作物を生産するだけで、加工や物流、販売などは他者に依存していた。しかし谷井農園は20年以上前から独自の販売ルートを開拓し、果物の生産に加えてジュースの製造と販売に取組み、国が掲げる農業の六次産業化(一次産業の生産×二次産業の製造×三次産業の販売=六次産業)の先鞭をつける存在になった。

(4)自社のブランド力を一気に高め、上質な顧客と取引先が集まる

価格でなく「価値」を求める上質な個人顧客に加え、五つ星のラグジュアリーホテルに自社製ジュースが採用されたことで、その存在が目利きの人たちに知られることになり、自ら営業しなくても注文が舞い込む農園になれた。

成長を続ける企業は、「ブランドを進化」させるために業界の盲点に着目して独自のノウハウを築き、品質に見合った高価格設定と自前の販路開拓を実践していることがわかる。

酒井光雄(さかい・みつお)
1953年生まれ。学習院大学法学部卒業。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれたマーケティングのコンサルタント会社、ブレインゲイト代表取締役。著書に『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版社)、『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書(マイナビ 監修)』など多数ある。日経BP社日経BP Marketing Awards(旧名称 日経BP広告賞)の審査委員を務める。
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