共和党全国党大会3日目の7月20日、トランプ支持者や反トランプ派が演説やデモを繰り広げるオハイオ州クリーブランドのパブリックスクエア。中西部ウィスコンシン州から駆け付けた青年、ニック・ホールマークさんは、「トランプ。米国を再び偉大な国に!」と大書された紺色の特大バナーを掲げながら、トランプへの思いをこう吐露した。
「外国の介入に反対する彼の政策が好きだ。不法移民を食い止めてほしい。(メキシコとの国境に)壁を築く、という考えもいいね」
ホールマークさんによれば、彼のまわりには「隠れトランプ派」が多いという。「人種差別主義者」と言われるのを恐れてのことだ。彼の地元はオハイオ同様、ラストベルト(旧工業地帯)に属し、トランプが地盤とする地域である。高校を卒業して2年。経済的理由から大学進学を断念し、食料品店でフルタイムで働いている。恋人と今すぐにでも結婚したいが、先立つものがない。
「グローバル化と自由貿易が、この国の製造業をメチャメチャにした。フリートレード(自由貿易)にはツケが伴う。フリー(タダ)なんかじゃない。トランプなら、米国に雇用とアメリカンドリームを取り戻してくれる!」(ホールマークさん)
米世論調査会社ギャラップの統計(10月10日付)では、家計に不安を抱く米国人のうち、トランプを好意的に見る人は62%に達する(※1)。
支持者から英雄視される一方で、差別的発言や「法と秩序」の強化、民主党のクリントン候補を(私的メール使用問題で)投獄すると公言していることなどから、その独裁ぶりに警鐘を鳴らす声は多い。
ピュリツァー賞受賞ジャーナリストで元『ニューヨーク・タイムズ』記者のデービッド・シプラーは、「彼はリバタリアン(自由主義者)などとは程遠い。独裁主義者だ」(同氏の10月11日付ブログ「シプラー・リポート」)と定義づけている。