まず自分から社員を好きになる
もっとも、現場の人員や設備などの職場環境を整えても、社員にやる気がなければうまくいきません。社員をやる気にさせるために何よりも大切なのは、経営者と社員が信頼関係で結ばれることではないかと思います。つまり、経営者に対して信頼感があれば、社員は自ずと会社に愛着を持つようになる。それが仕事へのモチベーションを高めるし、会社の成長を加速するパワーにもなってくれるからです。
しかし実際には、経営者と社員が信頼関係を築くのは簡単ではありません。会社はそもそも赤の他人の集まりです。また、経営者は支払うお金を少なくして、利益を高めたいし、社員は逆にできるだけ楽をしてより多くの報酬をもらいたいのが本音で、利害の不一致は避けられません。
では、どうやって信頼関係を築けばいいのか。答えは極めてシンプルです。私はいつでも「まず自分のほうから先に社員を好きになる」ことを心掛けてきました。社員が私のほうに近づいてくるのを待つのではなく、自分から先に胸襟をひらいて社員に接近するようにする。こうすれば、少しずつ警戒心が和らいでお互いの溝を埋めることができます。
あるとき、社員教育に苦労している中小企業の若い社長から「いかに社員を上手に使うにはどうすればいいか」という相談を受けたことがありましたが、私に言わせれば、そもそも「使う」という発想が間違っているのです。経営者はいかに社員に気持ちよく働いてもらえるように仕向けるか、毎日自分の命を削って会社のために働いてくれる社員に、どうすれば報いることができるかを日夜真剣に考えるのが仕事です。上から目線で社員を使うという発想では「こんな会社で働くのは嫌だ」と逃げ出したくなるのは当然でしょう。