奉仕作業で供養代を補填する手も
問題は供養代が一柱ずつかかるという点だ。先祖代々のお墓は、そこに眠る人も多い。たとえば3代(自分の両親、祖父母、曽祖父母)の6人を引っ越しさせれば計300万円。これだけ高額になると、簡単に墓じまいできない。
「人数が多いのだからボリュームディスカウントしてくれてもいいじゃないかというのが一般の感覚です。一方、お寺側は故人の供養をモノの売り買いと同じようにとらえては困ると考えています。その認識の差でトラブルが生じやすいのです」
住職ともめることなく、供養代を賢く抑える方法はないのか。方向性としては2つある。
一つは、引っ越す人数を絞りこむこと。たとえば古くから続くお墓の場合、同じ敷地内に複数の墓石があることがある。そこに眠る全員を連れていくと供養代が数百万に達するが、自分の親や祖父母だけ引っ越しさせれば費用を抑えられる。
もう一つは、供養代の不足分をお寺への奉仕活動で補填するやり方。
「お寺の行事を率先して手伝うとか草むしりをしたりして貢献していれば、ご住職も多少は理解を示してくれるかもしれません。供養代は、最終的にはご住職との関係で決まります。墓じまいにかけられる予算に限界があるなら、普段から良好な関係を築くことを心がけるべきです」
その他、改葬には新しいお墓の費用や開眼供養の供養代がかかる。合計するとかなり高額なので、事前にしっかり調べたうえで判断したい。
予算をクリアしても、墓じまいには大きな壁がもう一つある。手続きの煩雑さだ。お墓の引っ越しをするには、移転先となる墓地の受入証明書、もとの墓地の管理者からもらう埋葬証明書などをそろえて、もとの墓地のある市区町村に提出し改葬許可証を発行してもらう必要がある。手続き自体は難しくないが、新旧の墓地や役所と何度もやりとりするのは面倒なものだ。
「最近は改葬の手続きを代行する業者や行政書士も増えてきました。高齢になるとエネルギーがなくなるので、面倒な手続きを業者に頼むのも一つの手です。ただ、いきなり代理人がやってくることを嫌うご住職は多い。円滑に墓じまいしたいなら、もとのお墓のあるお寺にはまず自分で足を運んでお話ししたほうがいいと思います」
現在はまだ表面化していないが、今後問題になりそうなのが「手元(自宅)供養」だ。手元供養には、遺骨や遺灰を自宅に安置したり、遺骨を加工してプレートや合成ダイヤモンドにして身につけるなどのやり方がある。故人をしのぶものを身近に置いておけるため、近年は手元供養を選ぶ人も増えている。