手元供養そのものは法的に問題なく簡単にできる。が、問題になるのは自分が死んだときの対応。たとえば親の遺骨を小さな骨壺に入れて自宅に安置していた場合、自分の死後もずっと自宅に安置しておくことが可能かどうか。

実の両親ならともかく、2代、3代と代を重ねていけば、故人をしのぶ気持ちも薄れていくはず。そうなったとき、子や孫が自宅の庭などに遺骨を処分すると法律(墓埋法)違反になる。新たに墓をつくって納骨しようにも、墓地の管理者側から「身元が確認できない」といって拒否されるおそれがある。

民営霊園は倒産リスクに注意すべき

「管理者に納得してもらうには、事件性がないことを証明する必要があります。そのためには、手元供養するときに分骨証明書をもらっておくことが大切。火葬のときに分骨するなら火葬業者から、すでに納骨した遺骨を分骨するなら墓地の管理者から分骨証明書を発行してもらってください。また、あらたな納骨先を選ぶときには、『手元供養した親の遺骨を一緒に納骨できるか』と事前に確認しておけば、トラブルが起きるリスクをさらに減らせるはずです」

将来トラブルに発展するおそれがあるということでいえば、民営霊園の経営破綻も要注意だ。

一般に民営霊園は宗教や宗派の縛りはない。自治体(指定業者含む)が管理する公営墓地と違って応募に資格制限がなく、常時募集している点も魅力。だが、管理するのは民間企業なので倒産して霊園を差し押さえられるリスクがある。実際、消費生活センターに「お墓参りに行ったらチェーンがかかっていて入れなかった」という相談も寄せられた。

どのような霊園が危ないのか。まずチェックしたいのは経営主体だ。

「民営霊園の経営主体はさまざまで、石材店が参入しているところも多い。石材問屋さんによると、今年は墓石の売り上げが過去最低だったとか。健全経営の石材店も多いので一概に言えませんが、石が売れにくい時代になったことは考慮したい」

売れ行きにも気を配りたい。区画に空きが目立つ霊園は、業者が開発資金を回収できていないおそれがある。といって、全区画売れていても安心とはいえない。売り切ってしまうと霊園の収入は激減するからだ。

「すでに売り切った霊園では、今後、修繕費の問題が浮上してくるでしょう。民営霊園は昭和50年代に一気に増えました。今はともかく、近い将来、施設が傷み始めて修繕が必要になってきます。そのとき誰が費用を負担するのか。いきなり管理費を値上げされる可能性もあるので、事前に規約などを確かめておくことをおすすめします」

佐々木悦子
一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長。1969年生まれ。短大卒業後、証券会社勤務などを経て、エンディングコンサルタントとして活躍。2012年10月から現職。著書に『知っておきたいお葬式Q&A』など。
(一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長 佐々木悦子)
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