メール、電話、sns……アプローチ法を自在に変化
実際、NTT東日本を語って「電話料金の返還をします」と自宅の固定電話に自動電話をかけて、ダイヤルを押すようにガイダンスを流し、ATMに誘導して、金を騙し取ろうとする手口も出てきている。
また、「電話料金が支払われていません」という音声を流して、金を取ることもある。今後は、迷惑メールならぬ、迷惑電話の増加が懸念される。
似たような発想の手口は、サプリメントなどの健康食品でもみられる。数年前に横行したのが、高齢者宅に「注文していた健康食品を送ります」と嘘の電話をかけて、勝手に商品を送り付けて、代金を回収する手口であった。しかし今や、ネットを利用した形にシフトしている。この場合、連絡手段は、かつては電話で、今はネットにシフトした形だ。
ターゲットは高齢者だけではない。
ある女子高生が、スマホでSNSを見ていると、サプリメントの広告が出てきた。クリックしてみると、安い値段で販売されていたので、申し込んだ。これは「リスティング広告」といわれるもので、SNSの広告には、登録した本人の性別や年齢、趣味、嗜好などに合ったものが表示されるようになっている。
しかし翌月にも同じ商品が届くので、業者に連絡をすると、4回までの定期購入になっていると言われたという。同様な相談は多く、30代女性がお試し価格の500円のサプリメントを購入した後、同じ商品が届いて4000円の請求書が同封されていた。業者に問い合わせると、定期購入が条件で申し込んでいるといわれてたそうだ。
また、50代女性はSNSに化粧品の広告がでてきたのでクリックすると、有名女優も使っているという化粧品のサイトが出てきた。通常より安い5000円で買えるとあったので、申し込んだ。しかし最終画面で、個数や購入金額を確認できないまま注文が確定してしまい、後にクレジットカード会社に問い合わせると約4万円もの金額になっていた。
以上のように、注文をしていない商品を消費者に送り付けるという手口の角度は変えずに、SNSなどネットを使った方法にスライドして金を取るワルによる被害は増加の一途である。
これまでの送り付け商法のターゲットであった高齢者に、10代~50代と比較的若い幅の広い世代を加えた形で、騙しの罠を仕掛けられるようになってしまった。ワルたちは、悪知恵で労せずして着実にターゲットを広げたわけだ。