FinTechベンチャーを支える「ミレニアル世代」
フィンテックを担う企業は、新興のベンチャー企業がほとんどだ。アメリカのニュース専門放送局CNBCは、2013年から世界で最も革新的なスタートアップ企業50社を選出し、「Disruptor50」として発表している。そのうちフィンテック関連企業は、2013年度は50社のうち6社だったが、1年後の2014年度には12社へと倍増。50社のうち4分の1をフィンテック関連企業が占めるようになり、2015年にはさらに14社に増えている。
このような新興ベンチャー企業を支えているのは「ミレニアル世代」、すなわち1980年代から2000年代初頭に生まれた、現在20代~30代を中心とする若手である。注目すべきは、アメリカにおける人口構成のうち、37歳以下の世代が50.4%を占めていることだ。少子化が進む日本とは構造が違う。
米国のミレニアル世代には、次のような特徴がある。
(1)85%がスマートフォンを所有している
(2)78%がモノよりも経験にお金を使いたいと感じている
(3)40%が将来的に都会に住みたいと考えている
注目されるのは、銀行に全く行かない人が38%にも達し、1カ月に1回も訪れない人が26%を占めていることだ。また、
「今後5年でお金の支払い方が根本的に変わる」
「銀行よりもGoogle、Amazon、Apple、PayPal、Squareなどから提供される新しい金融サービスの方が興味深い」
という回答が、アンケートの多数を占めている (The Millennial Disruption Indexより) 。
米国でフィンテックが次々と発生した背景は、リーマンショックによる顧客の金融への不安・不満と、ミレニアル世代の拡大という2点に集約できる。リーマンショックは各国に大きな影響をもたらしたが、ITベンチャーの層の厚さや人口構成など、さまざまな要因が絡み合って米国で飛躍的にフィンテックが先行したと考えられる。
※本連載は『まるわかり FinTechの教科書』(丸山隆平著)の内容に加筆修正を加えたものです。
1948年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1970年代、日刊工業新聞社で第一線の経済・産業記者として活躍。企業経営問題、情報通信、コンピュータ産業、流通、ベンチャービジネスなどを担当。現在、金融タイムス記者として活動中。著書に『AI産業最前線』(共著・ダイヤモンド社)などがある。