ITを活用した革新的な金融サービス「フィンテック」。銀行をはじめとする日本の金融機関はフィテックの活用に出遅れており、早晩、衰退するという見方が流布されている。それは本当なのか。大和総研の矢作大祐研究員は、日本の金融機関が「フィンテックで遅れているというのは誤り。ただし、金融サービスもガラパゴス化するなら、海外勢との競争に敗れるだろう」と警鐘を鳴らす――。

※本稿は、大和総研編著『FinTechと金融の未来』(日経BP社)の一部を再編集したものです。

フィンテックは既存の金融業を滅ぼすか

日本の金融機関はこれまでテクノロジーを積極的に取り入れたがゆえに、 金融サービスがガラパゴス化する恐れがある。そうなるとフィンテックでは、国際競争に敗れるかもしれない。※写真はイメージです(写真=iStock.com/Chunumunu)

FinTech(以下、フィンテック)という言葉が巷に氾濫している。フィンテックは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、ITを活用した革新的な金融サービス事業を意味する。

革新的な金融サービスを生み出すフィンテック企業の登場によって、銀行をはじめとする既存の金融業は衰退し、いずれ消滅するという見方が流布されている。だが、本当にそうなのだろうか。フィンテックの既存の金融業への影響を予測するには、フィンテックによって提供されている金融サービスの本質的な機能は何か、その機能が既存の金融業や金融サービスに対して、どれほどの破壊力を持つのかを、体系立てて分析する必要がある。

そこで我々はこの課題にトライすべく、お客のニーズはあるのに金融機関が商品あるいはサービスを提供しえてない分野を「隙間」ととらえ、隙間を埋める金融イノベーションを、その性格によって次の4つに分類した。 金融イノベーションがどの分類に属するかによって、金融業や社会に与える破壊力を、捉えられると考えたからである。4つのカテゴリーは次の通り。

プロセス・イノベーション=金融機関内部あるいは金融機関の間に存在する隙間
プロダクト・イノベーション=顧客と金融機関の間に存在する隙間
インフラ・イノベーション=各金融機関に横断的にかかわる金融インフラ上の隙間
ソーシャル・イノベーション=金融業を含む社会全体に存在する隙間

上から下に向かうほど、イノベーションが、金融機関内部から金融機関同士、さらに社会全体へと広がり、既存の金融業に与える破壊力は大きい。