試算! 月3万・5万拠出した時に得する額・損する額
確定拠出年金の「選択」制度は前ページのような負担軽減もあり、将来のために積み立てもできて何の問題ないのでは? と思うかもしれません。それはその通りなのですが、実は思わぬデメリットもあるのです。
▼社会保険の等級が下がると……?
確定拠出年金に回すことで実質のお給料が下がると、厚生年金や健康保険などの保険料を決める「標準報酬月額」の等級も下がります。標準報酬月額は、前年の4~6月のお給料を平均して、○○円~○○円は○○等級、と等級ごとに段階的に分けられます。
その標準報酬月額の等級が下がると、目先の社会保険料が下がるメリットがある代わりに、将来受け取る厚生年金の額や社会保険から受け取る給付も減ってしまうデメリットもあるのです。
以下の図を見てください。
月収が40万円でボーナスは月収の3カ月分、35歳の東京都在住、協会けんぽ(東京都)の人の場合です。
このように、等級が下がると、受け取る厚生年金が減ってしまいます。上記の条件で前出の【月5万円拠出する】場合を試算すると、65~85歳までの20年間にもらえる厚生年金総額が約288万円少なくなる(年間約14.4万円)計算になります。また、同じように【月3万円拠出する】場合は約164万円少なくなります(年間約8.2万円)。
前述したように、現役で働いている時代は住民税や社会保険料が減るのですが、リタイア後は逆にもらえる年金が減ってしまう。これに関してはしっかりチェックしておくべきでしょう。
国民年金(基礎年金)には影響ありませんが、老齢厚生年金をはじめ「障害厚生年金」「遺族厚生年金」などの社会保険からの保障や、ケガをして仕事ができないときに給付される「傷病手当金」や「出産手当金」、雇用保険から給付される「失業保険」「育児休業給付金」「介護休業給付金」などの受給額も減ってしまいます。
例えば、失業保険は【月5万円拠出】なら12.5万円減(支給日数最大150日分の場合)、【月3万円拠出】なら7.5万円減(同)となり、育児休業給付金は【月5万円拠出】なら30万円減(最大給付期間10カ月の場合)、【月3万円拠出】なら18万円減(同)となります。社会保険は収入が減ったときに支えになるものですので、万が一の際にサポートが手薄になってしまうのは少し不安といえるでしょう。以上のような、「いい点・悪い点」をよく把握して、加入したいものです。
もっとも、厚生年金の標準報酬月額の等級30等級(月収60.5万円以上)、給与から掛け金を拠出しても等級が下がらない人は問題ないでしょう。