もちろん、ある程度の出世欲や「自分の生活を豊かにしたい」という願望は、誰もが自然に抱くものです。それが原動力となって大きな成功を収められるのも確かなので、否定するつもりはありません。
しかし、世間から「成功者」と認められる立場になったのなら、一旦俗な欲望は昇華して、利益を追いかけるフェーズは終わったと思うべきです。そこから先は、自分の能力を使って社会をよくすることを考えていかなければならないフェーズです。まわりに支えられている自分に気づいて、恩返しをしなくてはならないのです。
慢心したトップはパーティに呼ばれない
そういう意味でいえば、「慢心」や「極端なプライドの高さ」もダメな人の特徴の一つ。彼らは鈍感で、成功者である自分の「肩書」に人が集まってきていることに気づかず、自分が人間的に「偉くなった」と勘違いしています。そして、根拠のない万能感から人間的な魅力を磨くことをしないのです。すると、やはり事業が傾いたときには、その利益に集まっていた人たちは潮が引くようにサッといなくなってしまいます。もちろん、沈んだ状態から引き上げてくれる人もいません。
怖いのは、エグゼクティブの人脈は意外と狭いということです。たとえばみなさんもパーティに参加して、「前に別の会場でもお会いしましたね」と言葉を交わす顔見知りの同業者がいると思います。
それは、エグゼクティブの世界でも同じこと。出身校や起業前の勤め先など、エグゼクティブには共通項が多いため、その人脈の中で「あの人はプライドが高くて面倒だ」「お金ばかりで長期的なビジョンがない」などと噂されたら、いつの間にかパーティの輪から外されてしまいます。すると、当然ビジネスにも悪影響が出ます。
ビジネスマンである以上、企業の利益を追求するのは当然です。しかし、どこかで利己的な気持ちを捨てられないと、「成功者」ではなく、ただの「お金持ち」で終わってしまいます。
証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスターに。トニー・ブレア元英首相の独占インタビューをはじめ、世界のVIPたちへのインタビューは1000人を超える。現在、日経CNBC「夜エクスプレス」のアンカーを担当。テレビ朝日「サンデースクランブル」ゲストコメンテーターとして不定期出演中。