民主党の枝野幸男幹事長あたりは、「10年後にプライマリー・バランス」と言っているが、それでも年に最低4兆円ずつ削らなければならない。社会保障費の自然増分を計算に加えると実質、5兆円ずつ削らなければならないのだ。

これは一律1割減程度のシーリングで達成できる数字ではない。官僚の抵抗をはねのけて一律1割減が実現できたとしても、コストカットできるのは2兆円程度。しかも民主党政権は削った2兆円を自分たちのマニフェストや成長戦略に使うというのだから、プライマリー・バランスへの道は平行線のまま。否、社会保障費が毎年1兆円ずつ増えるぶん、遠のく。

シーリングで既存のものをカットしていくような今の予算編成のやり方では、もはや日本は立ちいかない。お金の使い方をガラリと変えるには、ゼロベースで国をつくるしかないと私は思っている。

基礎自治体というものをベースにしながら道州制を導入し、新たな日本の統治機構のあり方を定義して、そこから歳出と歳入を考えるのだ。幸いICT(情報通信技術)を駆使すればコストをかけずにサービスレベルをあげることができる。役所の窓口、許認可などはすべてネットでできるし、市町村ごとにつくらないで全国一律にクラウドコンピューティングでカバーできる。

本当に必要なものは何なのかをゼロベースで考えると、要らないものは山ほどある。

高校の無償化など必要ないし、学校の先生だって今の半分の人数でいい。学科の勉強は全部ネットでできるし、先生は生活指導や生き方などの個人指導に徹してもらえばいい。あとはコンピュータ会社の技術者がパソコン実務を教えに来たり、弁護士が法律の基本を教えたり、八百屋が仕入れと原価の関係を教えればいいのだ。

教育から介護、看護、保育などの社会福祉、あるいは消防や自警活動まで、地域住民が手分けして行政サービスを分担すれば社会コストは大幅に下がる。

要するに、公務員の数を3分の1にすることで20兆円近い削減ができるのだ。加えて不要不急の資産や休眠口座を国に供出したり、年金を辞退するようなかたちで国民一人一人が国の借金返済に貢献しやすい社会をつくり上げ、国債の元本を減らすことを最優先してやらなくてはならない。急速な老齢国家が過去の延長線上で経費の無駄遣いをやっていては、日本の再生などできるわけがないのだ。

(小川剛=構成 PANA=写真)