新市場開拓の中で警戒を怠らない
企業が市場トレンドの先を行くために邁進する中、複雑さが再び忍び込んでくる危険性は高い。それを防ぐためには次の3つの防御措置を実行することだ。
──ビジネスモデルをシンプルに保つ。絶えず組織を見直して、「もう一度ゼロからスタートして1種類だけの製品またはサービスを軸に会社を築くとしたら、その製品またはサービスは何か」と考える。
──新製品またはサービスがクリアしなければならないハードルを引き上げる。そうすれば、製品の種類を増やすことに伴う隠れた複雑さのコストを認めざるをえなくなる。
──新製品やサービスを1つ加えるたびに、既存製品・サービスから1つを削除もしくは簡素化する。
1997年にカナダで創業されたネット銀行・INGディレクトは、顧客がオンラインだけで貯蓄口座を開設・管理することを可能にした。支店を設ける必要も、それに関連する間接費を負担する必要もないため、高い利子で、新しい預金者を引き寄せている。
2000年に米国部門を立ち上げて以降、同社の預金額は年率50%以上のペースで増大し、07年の終わりには約540億ドルに達した。顧客のニーズに応えつつ、利益を高める機会を模索してきた同社。商品構成が拡大して、住宅ローンや当座預金や証券仲介サービスが含まれるようになっても、それぞれの商品カテゴリーの中では複雑さを排したビジネスモデルを守り続けている。
すばらしいサービスは、複雑さという代償を払わなくても提供できる。ここに挙げた例をはじめとする多くの革新的企業が気づいているように、複雑さを抑えることで、最優良顧客によりよい価値を提供することに全力で取り組むことができるのだ。