中立公正ではない地域包括支援センターもある
最初に介護の相談をする役所はいうまでもなく公的機関です。
また、同(2)の役所からバトンを受け、担当ケアマネージャーを決めたり介護サービスの相談や仲介の窓口になったりする地域包括支援センターは微妙です。
その業務の性格上、公的機関と思われがちですが、大半の地域包括支援センターを運営しているのは社会福祉法人。公益法人という公的性格を持つ民間事業者なのです(数は少ないが以前同様、役所が運営しているところもある)。そして、ここが仲介し介護サービスを行なうのが民間事業者です。
地域包括支援センターが設置されるようになったのは2005年に介護保険法が改正されてから。それまでは役所の在宅介護支援センターという部署がその役割を果たしていることが多かったのですが、介護保険制度が施行され要介護者が激増したことで対応しきれなくなり、ほとんどの地域で介護の人材とノウハウを持つ社会福祉法人に委託するようになりました。
社会福祉法人は公益を目的として設立・運営される所轄官庁から認可を受けた公益法人です。営利を目的としてはならず、そのかわり自治体からの補助や税制の優遇措置があります。
また、社会福祉法人であれば地域包括支援センターを開設できるというわけではありません。一定のエリア(平均人口約3万人、高齢者人口約6千人が目安)に1カ所と決められ、審査を受けたうえで設立が認可されるそうです。
そうした厳しい規定があるうえ、役所から委託を受けて業務を行なうのですから、民間業者といえども公的機関と同様の組織と見てよさそうな気がします。しかし、ケアマネージャーのSさんは、「そうとも言い切れないんです」といいます。
Sさんは現在、独立したケアマネージャーとして事務所を構えて仕事をしていますが、以前は地域包括支援センターに所属しており、その時の内情を含めて、こう語ります。
「役所などの公的機関とその職員は中立公正が大原則ですよね。介護職も同様で研修のときなどは“中立公正であれ”と厳しく指導されます。すべての利用者さんに質の良い介護サービスを提供するのが使命ですし、そこに差が出てはいけないからです。でも、地域包括支援センターのなかには中立公正とはいえないケースがあるんです。私が務めていたところがそうでした」