本業の中の変化は恐れずに

300年を超える歴史があれば、順風満帆ではない時代もあります。

昔、五島列島に出て行って漁具を売る店を出して失敗したり、南部、今の岩手県北部で鉄鉱山の経営に乗り出し撤退したりしたこともありました。さらに祖父の時代、北海道の海産物に手を出して相場が暴落して大損し、一時は会社が人手に渡るという危機もあったのです。

和歌山出身の若手ビジネスパーソンが都内で集まった。

若い社員の中には、「どうして事業の多角化をやらないのか」と言う人がいます。でも、長い歴史の中でいろいろやったけど全部失敗し、残ったのが醤油だったというのが現実です。

だからといって、今やっている事業を守りさえすればいいと考えるのでは企業は永続しないでしょう。先ほど引用した『百年続く企業の条件』のサブタイトルに「老舗は変化を恐れない」とあります。時代によってお客さんも変われば技術も変わる、社会全体が変化します。経営者が「企業を永続させたい」と強い信念を抱くことは老舗になるための必要条件ですが、十分条件ではありません。経営者は環境変化に敏感であり、それにいち早く対応していけるかどうかが企業の命運を握っているのです。

ただし、変わるべきはあくまでも本業の中のことであって、まったく関係のない事業にまで手を出してもうまくいかないというのは、当社の歴史が示している通りだと思います。