日本で300年以上続く企業は435社。このうちの1社であるヤマサ醤油の濱口道雄社長が、超成熟産業になった醤油製造をどう盛り上げてきたのか語ってくれた。和歌山出身の若手が集う「わかやま未来会議」での講演を全公開。

300年企業のリレーランナー

ヤマサ醤油の初代、濱口儀兵衛が紀州から銚子に渡り、会社を創業したのが正保2年(1645年)で、私は創業家の12代目となります。先代からバトンを受け、そのバトンを後継者に渡すのが私の大事な役割です。走っている間は他のランナーに抜かれてはいけないし、できることなら前を走るランナーに追いつき、追い越したいと思って33年間経営に当たってきました。

濱口道雄・ヤマサ醤油社長

日本には諸外国に比べ、長く続いている老舗が多いといわれます。

『百年続く企業の条件』(帝国データバンク編)には、100年以上の企業が1万9518社あり、そのうちの938社は200年以上、さらに435社は300年以上続いているとあります。ヤマサ醤油は300年以上続いている会社の1社ということになります。

私までバトンをつないでくれたランナーたちはみな、企業の永続を大事にしていたはずです。当社だけでなく、日本の多くの会社が長続きすることを経営の価値観として持っていると思うのです。

この価値観はアメリカでは多数派ではありません。ある程度育てた会社を高く売って、あとは人生を謳歌しようと考えている創業者が多いのです。ヤマサ醤油が同じ創業家で12代続いていると話すと大体のアメリカ人はびっくりします。合衆国の誕生より古くから事業をやっているのだから驚くのも当然でしょう。