小池氏が都知事に就任した場合に壁となるのは都議会自民党との関係だ。都議会で多数を占める自民党は増田氏擁立の中心で、根回しが上手くない「小池新知事」とは対立することが予想される。世論の支持が高くても、政策や人事案件がすんなりと進む保証はない。この点は小池氏も想定しており、小池氏は都議会の「解散」という奇策に打って出る構えを見せるが、都議選後も議席比率が変わらなければ都政の停滞は免れない。

いっぽう増田氏の場合はどうか。岩手県知事を3期務め、総務相を経験した増田氏は、「安定感」と「地方行政の明るさ」がセールスポイントだ。実務能力の高さに定評があり、民進党都連からも候補者選考で名があがった。

舛添要一前知事の辞任で負の連鎖を避けたい自民党都議団は増田氏の擁立方針を決め、都内23区の首長でつくる特別区長会の有志からも支持を受ける。抜群の組織力で「増田新知事」が誕生すれば「都政の運営や区長との関係は心配がない」と党幹部も太鼓判を押す。増田氏は人気投票となりがちな都知事選で政策論争に持ち込みたい構えで、政策集づくりには余念がない。

不安視されているのは、これまでの増田氏の主張との整合性だ。増田氏は総務相時代、大都市に偏っていた法人関連の税収を地方に再分配することを提唱。地方税の一部を国税に衣替えし、地方に配る税制にした。この改正による東京都の減収は年間2000億円近くに上る。秋田県の佐竹敬久知事は記者会見で「地方創生で東京都をいかに小さくするかを主張してきた人が都知事になると矛盾する」と指摘。SNS上では、「岩手県知事時代に借金を2倍にした」「外国人参政権に賛成」と、危惧する声が目立つ。増田氏は今回の出馬を「スカイツリーから飛び降りるような覚悟」としており、こうした懸念を払拭できるかが問われそうだ。

政界では「改革派の小池氏」と「安定感の増田氏」の戦いになると見ており、今回の都知事選は歴史に残る激しい接戦になると予想する。保守が分裂した17年前の都知事選は知名度がある候補者が勝利したが、今回はどういう展開を見せるのか。その動向が結果を大きく左右する無党派層の票の行方に注目が集まる。

(時事通信フォト=写真)
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