感謝の気持ちで仕事を楽しめる

駒崎元庸は、62歳で定年し、1年ほどブラブラと過ごしていたが、また働きたいと思うようになり、テレビでたまたま知った高齢社に登録、すぐに布団のリース会社に派遣された。現在、配達運転補助や布団乾燥業務を手伝っている。と同時に朗読と演劇の趣味を満喫、小学校の課外授業で朗読講師を務めたり、年1回の演劇公演のために毎週、舞台稽古を欠かさないという。

「仕事に当たり、年の功をひけらかさない、何ごとも『はい』と素直に受け答えすることを心がけています。職場は年下ばかりなので、扱いづらいと思われないように言動には気をつけています。働かせて頂いているという感謝の気持ちで仕事が楽しめるようになりました」と駒崎は語る。

取締役営業部長の緒形憲は「昔の仕事にこだわりすぎるとうまくいかない」と語る。

「経理の仕事を請け負ったのだから、電話にも出ないという人もいますが、小さい職場では何でもやろうという姿勢が大切です。働き方の基本は若い人のお手伝いであり、相手を立てる気持ちが大切です。肩書きで仕事はできません」

とはいえ、自分が望まない仕事先に派遣されることはない。「この仕事ならできる」という合意を得て、派遣されるのだが、マッチングが簡単ではないのが課題だ。

朝早すぎたり、夜遅すぎるような仕事であれば、働ける時間帯について高齢社が取引先と交渉する。また、安い賃金で使えるとか、若い人の代替と取引先が勘違いしているときは断ることもある。

「若い人を追い出すためにやっているのではない」と幸山は言う。

無理はしないとは言え、シニア側も必要な勉強はしなければならない。

「パソコンを扱えると聞いていたのに、いざ派遣すると、エクセルは使えないとか、1本指入力しかできないということはあります。65歳以下の人なら、ほぼパソコンは使えると思いますが、やはりワードやエクセル程度は使えないと、報告書1つ書けません」と緒形はアドバイスする。

高齢社は男性の登録社員が中心だが、創業者の上田はシニア女性にも活躍の場が必要と考え、家事代行サービスの会社を買収、2012年から「かじワン」事業をスタートさせた。13年から同社は独立した子会社となっている。

現在、220人ほど登録社員がいるが、想定よりも年齢が若く、平均50歳だという。

「登録社員の希望と派遣先の場所が合わずに、なかなか黒字化しません。家事代行の依頼はあるのですが、登録社員が場所が近すぎるのも遠すぎるのも嫌がるので、スムーズにマッチングできないのです」と幸山。