たとえば建築物。日本は建築基準法で厳しく規制されている。だが容積率や建蔽率などは理屈も根拠もなく決められているし、東京には世界でも珍しい日照権があり、都市の高層化を阻害している。“首都圏道”においてはこうした規制をなくして、容積率や建蔽率も耐震性や強度が科学的、建築学的に証明できれば原則自由にする。高層化が一気に進めば東京の富は増す。400%の建蔽率が1200%になれば、800%分の富が新たに生み出されるわけだ。

高さばかりではない。日本には(中国のような)打ち出の小槌はないと言ったが、有効利用されていない土地は都心にもたくさんある。役人の勝手な匙加減で決められた市街化調整区域はそこら中にあるし、産業立国の名残で産業用地のまま用途変更されていない土地が、千葉・幕張から横浜・みなとみらいまでの湾岸エリアに広がっている。

ああ使え、こう使えと役人が恣意的に土地の使い方を指図するのをやめさせれば、富の源泉はいくらでもあるのだ。湾岸エリアを職住接近の住宅地につくり替える。あるいは江戸川区、江東区、墨田区などのいわゆる軟弱地盤の土地改良から始めて、500メートル4方のブロック単位で再開発をかけて、道路を広くつくり直し、地下の共同溝にすべてのライフラインを埋設、地下に食糧備蓄庫や非常用発電装置も完備させて、その上に超高層ビルやマンション、商業施設や学校までをつくる。

都市再生債、東京再生債のような債券を4~5%の利回りで発行すれば、有効な投資先が見つからずに眠ったままの1400兆円という日本の個人金融資産が掘り起こせるし、世界中から資金を呼び込むこともできる。税金を使わなくても、これだけの大構造改革を十分に賄えるのだ。このような形で街づくりをしていけば、向こう20年は間違いなく大建設時代となり、雇用も富も創出されていく。

目先の選挙に勝つためにバラマキをしていたら、自民党政権と何ら変わりはない。政権を永続させたいのであれば、「富を創出する仕掛け」をどうするか、脱官僚を謳った民主党はその具体的ビジョン、新しい国の形、を国民に一刻も早く提示すべきだろう。

(小川 剛=構成)