問題は三つ目。財界から距離を置くという。ちょっと待て、である。経団連の爺さんたちから距離を置くのはいい。しかしながら企業、経営者と距離を置いてはいけない。日本の場合、富をつくり出すのはあくまで「企業」なのである。「財界から距離を置くということは、富をつくるところから距離を置くのか――」。こう民主党の若手に問い質すと、「いや、そこまでは考えていませんでした」と言う。

誰かが富をつくっていると他人事のように考えているから、誰かがつくった富をバラ撒くことにしか意識が向かない。富を創出することの大切さに理解が及ばないのだ。

「富を創出する仕掛け」は、21世紀の日本にとって最も重要な課題となる。なぜなら、従来の富の分配システムが機能しなくなってきたからだ。分配システムは十分な収入があることが前提だが、その前提がすでに崩れている。

富を創出できる国、富が創出できる時期というのは限られていて、その多くは短命である。1970~80年代の日本がそうで精力絶倫の工業国だったが、アメリカに仕掛けられたプラザ合意の罠でバブルに踊り、その後は坂道を転げ落ちるようにおかしくなった。

富をつくり出す力が弱まった国家は衰退する。再び日本が富を創出できる国になるためには何が必要か。富をつくり出す企業の活動に「自由」を与えることである。企業のシーズと顧客のニーズがマッチしたときに、クリエーティブな富の創出がなされる。ところが「規制」がたくさんあると、その規制の枠の中でしか、発想できない。

日本の場合、現行憲法や官僚機構は国家中心の考え方だ。初めに国ありきで、企業はその許認可の範囲の中で富をつくる行為をする、というかたちになっている。いわゆる許認可行政は、戦後の日本が奇跡的に復興して高度成長を遂げた原動力の一つではあるが、今の日本がうまくいかなくなっている最大の原因でもある。

世界第2位の経済大国でありながら、許認可行政でさまざまな規制があるために、日本企業は世界に打って出る力を養えず、逆に世界から日本には企業も投資もほとんどこない。投資家にとって魅力がないからである。