(1)憲法は新しく描くのか(A)、現行憲法の不具合を改正するのか(B)
  (2)統治機構は経済自立できる道州単位にするのか(A)、中央集権のまま行政を大くくりにして分権するのか(B)
  (3)国際社会における日本の立ち位置として、地球的規模の問題に直接関与するのか(A)、それとも一国主義でODAなどを通じてできる限りの貢献にとどめるのか(B)
  (4)富の創出の仕掛けとして、ルールを決めて企業に任せるのか(A)、初めに国ありきで規制と許認可を原則とするのか(B)
  (5)最低限の安全と安心という保障、すなわちセーフティーネットは国の責任なのか(A)、自治体の個別サービスに任せるのか(B)

この5つについて私はAを支持する。世界経済を取り込む意味でも、日本が強力な先進国として軍事力ではなく知的貢献で世界に大きな影響力を発揮するという意味でも、Aを選択することが必要、と思うからだ。これらの点について、責任政党に対して政策を明確にするよう働きかけ、生活者の立場で国家戦略を立案・具現化していくためのシンクタンクとして「ザ・ブレイン・ジャパン(TBJ)」を設立する(http://www.thebrainjapan.com/)。

ここで話を民主党のマニフェストに戻そう。問題となるのは、先のアジェンダ(4)である。

今回の選挙で民主党は完全な勝ちゲームだったのだから、具体的な数字をあまり盛り込む必要はなかった。アメリカのオバマ大統領を見倣って「about time to change」とか、「いい国をつくろう」とか「本当の地方自治を」というようなスローガンで押せばよかったのだ。マニフェストで大風呂敷を広げた数字が実現不可能と見抜かれると、民主党への失望が広がり、大きなゆり戻しが起きることになる。

たとえば、韓国の李明博大統領は「747ビジョン」(経済成長率7%、10年以内の一人当たり国民所得4万ドルと世界七大経済大国入り)、台湾の馬英九総統も「633公約」(経済成長率6%、一人当たり所得3万ドル、失業率3%以下)という具体的な数字を掲げて政権の座に就いたため、嘘つき呼ばわりされて政権運営に苦労している。

選挙にはバラマキ公約が効くのは間違いない。前述の最低賃金にしても、時給700円で働いている人は民主党に投票するに決まっている。だが現実に全国平均の最低賃金が1000円になったら、日本の中小企業は壊滅する。

私の友人が九州でスーパーを経営している。600人を雇っていて賃上げ交渉もあるが、時給700円が攻防ライン。「50円上げろ」という要望に「3円が精一杯」という世界だそうだ。もし最低賃金が時給1000円になったら彼の会社は即倒産。顧客単価を250円上乗せできれば何とかなるだろうが、そんなご時勢ではない。時給700円で人が集まらないというなら話は別だが、わんさか応募はあるという。