世界で繁栄を勝ち得た国や地域を見ると、自らの税金収入だけで繁栄しているところは一つもない。国民の税金で公共投資をやって、経済刺激をしているような19世紀型の国家で繁栄しているところは一つもない。ましてや、税金が足りなくて債券を発行して、将来から借りてくるような無惨なやり方で経済が繁栄するわけがない。自民党政権下で日本は悪い夢を見ていたのだ。民主党が無駄を排除すれば財源はある、と言っているが、その程度では悪い染色体は変わらない。
金、企業、技術、人材、情報が、世界中から流れ込んでくるようにしなければ繁栄は持続しない。借金だらけのアメリカ、石油が出なくなったドバイ、そして中国や香港、シンガポール……どこも自分自身は富を持っていなくても、外国企業や投資家を呼び込んで雇用を創出してもらう「貸席経済」によって繁栄をつくり上げてきた。
グローバル経済の過去も現在も、そして未来も、世界中から金、企業、技術、人材、情報を呼び込んで、「繁栄を輸入する」競争であることは不変である。その繁栄を呼び込む組織単位が「道州」である、ということに民主党は気がついていない。せいぜい基礎自治体(人口30万人くらいのコミュニティ)の上位概念、くらいにしかマニフェストでは位置づけられていない。
今後、日本が繁栄していくためには、国家の統治機構を改め、世界から富を呼び込む単位を道州、としなくてはいけない。そして道州間の激しい呼び込み合戦が、知恵を出し、汗を流す競争を生み、日本はダイナミックな国へと変貌していくのだ。
外国企業が「九州でビジネスをやりたい」「北陸が一番自由だ」と思うような環境を整える。すなわち各道州が自発的に規制を撤廃して開放経済に向かう。もちろん、国家としての共通の作業とかルールは残るだろう。麻薬、銃砲、売春のような非合法なビジネスはガッチリ取り締まる。しかし、社会的に許容される範囲については、各道州議会の自主的な判断で極力規制をなくす、あるいはなくす競争をする――。
これが冒頭(4)のアジェンダ、「富の創出の仕掛けとして、ルールを決めて企業に任せる」の(A)である。(A)の前提として、民主党も一応標榜している道州連邦制が極めて重要であることが理解されるだろう。