「北朝鮮の暴発」に今、何をすべきか
このように日米安保の前提条件がまったく変わってしまっているのだ。日本の目の前にある国防上の脅威は、中国でもロシアでもない。北朝鮮である。日本にとって明らかなテロリストは北朝鮮、しかもその暴発の脅威、というのが国民のコンセンサスであろう。日本を射程に収める中距離弾道ミサイル「ノドン」(射程距離約1300キロ)は、実戦配備ずみと言われている。
北朝鮮の核開発を巡る6カ国協議の顔ぶれを見ても、抜き差しならない対立が起きうるのは日本と北朝鮮だけである。ミサイルの射程が届かないアメリカは北朝鮮に関心はない。核開発問題にしても、兵器として使えるようになるまでには、まだ5年か10年はかかると見ている。北朝鮮も、アメリカをテロの標的にするのは自殺行為であることはわかっている。
議長国の中国と北朝鮮とは、そもそも親分子分の関係だし、ロシアは付き合っておいたほうが得するかもという思惑で6カ国協議に参加しているだけ。北朝鮮を怖いと思ってはいない。韓国はもともと同胞であり、金大中政権以降は北朝鮮に完全に懐柔されている。
つまり、6カ国協議の当事国で北朝鮮の脅威に晒されているのは主として日本で、この限りにおいて戦後初めて日本の国防上、アメリカとは運命共同体ではない、という状況が生じたのだ。
今後、北朝鮮が暴発した場合、日本に中距離ミサイルを撃ち込んできたり、地方都市を爆撃して撹乱したり、上陸用船艇で日本の海岸に軍隊を上陸させたり、炭疽菌を持ち込んでバイオテロを引き起こす、といった事態が想定される。そのときに、果たしてアメリカは日本を守ってくれるのか。
日米同盟は、そもそも旧ソ連(そして古くは共産主義の中国)を仮想敵としていて、北朝鮮のような国が暴発することは前提にしていない。日本の国防の基本線は日米同盟なのだから、北朝鮮を仮想敵とした日米安保がどこまで有効なのか、ということを明らかにし、明文化しておかなくてはいけない。6月に訪米した韓国の李明博大統領は、アメリカから「核の傘」で守ってもらう確約を文書でもらってきている。アメリカは日本に対して、まだそのような確約をしていない。