6月10日現在で停止中の電源は、福島第一・第二原発の全基と柏崎刈羽原発の2~4号機、広野火力発電所の2・4号機と常陸那珂火力発電所の一部。このうち、広野と常陸那珂の火力発電所は夏場前の復旧が見込まれている。原発電力として東電に供給されるのは、柏崎刈羽からの381万2000kWのみである。


PANA=写真

被災地の生産縮小と国民の節電で、東電は今夏最大電力の見通しを5500万kWと昨年よりも少なめに予測している(6月20日現在)。平成以降の東京の夏で、これまでに最大電力を記録したのは01年7月24日の6430万kWだ。

ただし、それは日中の数時間にすぎない。実際、365日の中の数日、さらにその数時間の瞬間的な電力不足を補うのであれば、予測ピーク時の生産を前後の日時に分散させる生産調整や、鉄道・情報通信・ライフライン・病院・学校などを除く日中の計画停電、企業と家庭の節電などで充分に乗り切れるとの見解もある。同様の電力消費抑制で、日本は1970年代の石油危機も乗り越えたからだ。

また、電力会社は全国41カ所に「揚水発電所」を持っている。

揚水発電は、発電所をはさんで建設された上下のダム間で貯水を落とし、その落差で電力を生む緊急用の電源だ。一度上から下に水を落としてしまえば、再び水を揚げるにはその発電力の1.4倍の電力を要し、時間も約8時間かかる。しかし、不足が予測される数時間の電力を補う程度の水を下ろし、ピーク時をすぎたら需要を上回り始める供給力で夕方から再び揚水を始めれば、翌日には再び上に水が準備される。その揚水電力が、東電には680万8000万kW(他社受電含みで1053万3000kW)ある。

仮に、前述のように「企業の自家発電」「生産調整」「計画停電」「節電」を実施してもなお「200万kWが不足」だとする。その場合、予測される不足分の電力を補うだけの水を下ろして揚水発電し、ピーク時をすぎたら一晩かけて水を戻せば翌日に備えられる。

しかし、それだけで足りるか否かは断言できまい。あるいは逆に、そもそも原発が賄っていた電力を他の電源で補うことは本当に不可能なのか。

※すべて雑誌掲載当時

(Bloomberg/Getty Images、PANA=写真)