そこで私は、「お金をかけるべきいいチャンス」と捉えました。ふだん気軽に泊まれるホテルとは違う、高いホテルに泊まることで“比較する目”“見極める能力”が養われると期待したのです。そのホテルでは、シルク・ドゥ・ソレイユのショー「O(オー)」を見ることもできました。これにも数万円のチケット代を支払い、できるだけいい場所で子供に見せました。
その後、ロサンゼルスで泊まったホテルは1泊2万円。宿泊料金と価値についての会話となるよう、私が誘導していくと、次男は5万円のホテルとの比較を始めます。立地、設備、サービス、さらには宿泊客までが違う。するとなんと「この部分は5万円のホテルと遜色ないね」「ここは値段相応かな」などと、子供なりに見極め始めたのです。
いま、私が学会で海外へ行くときには、可能な限り息子も同行しています。宿泊先では「このホテルはもっとお金をとってもいいね」「このホテルは立地のよさ以外は金額にふさわしくないよ」などと、ベラージオでの経験から始まった、自分なりの物差し作りを進化させています。
こんなふうに子供と「お金を使うときの時間を共有する」ことはとても大事です。親としては、子供が興味あることは何か、何を優先するのか、それを客観視できているか、を知ることができるからです。
新潟生まれ。昭和大学大学院医学部修了。医学博士。小児科専門医。株式会社「脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。脳の活動と成長を画像化する技術を発見。脳の機能と成長のメカニズムとして「脳番地論」を提唱。現在、胎児から超高齢者まで数万人以上の脳を分析し、発達障害や認知症の診断・予防医療を実践。『脳の強化書』(あさ出版)など著書多数。