悪徳業者を「撃退した!」。その油断が危ない
こうした具体的な行動を目にすれば、おかしな言動はわかりやすいが、電話上での話のやりとりだけだと、とんでもない論法を展開されながらも、そのおかしさを指摘できずに、相手の口車に乗せられてしまうことは起こりうるのかもしれない。
騙された理由の2つ目は、詐欺犯らの怪しい勧誘を「きっぱり断った」ことでトラブル回避できたという女性の気の緩みもあったのかもしれない。「防御できた」つもりが、実はできていなかった。安心感が突如崩されてしまったことでひどく動揺したに違いない。
たいがい詐欺や悪質商法と思しきが電話がかかってくれば、「結構です」「いりません」とはっきりと断れば、多くの人は撃退できると考える。確かに、この言葉は、詐欺や悪質商法を追い払う「切り札」となりうる。
しかし、「しっかり断ったので、大丈夫」と安心している気持ちを崩されると、一気に動揺してしまう。すなわち、ワルたちは私たちの「切り札」を崩すことで、冷静な判断ができない状態に追い込むのだ。
もし、切り札を切ったとしても、もうひとつの切り札を予め準備しておく。そんな準備が私たちには必要なのだ。とりわけ、ひとりで暮らしている老親などには。
もうひとつの切り札。それは、先の名義貸しの電話を受けた女性の場合でいえば、「断る」という切り札だけでなく、警察などに通報しておき、今後のアドバイスを受けておくだろう。もし、再び電話がかかってきても、その助言で対応するという、別な切り札を準備しておけば、動揺して騙されることもなかったはずだ。不審電話があった時点で、被害に遭わなかったとしても警察などに通報することは大事なのである。