出生率1.8と介護離職ゼロの大風呂敷

新3本の矢の目標として名目国内総生産(GDP)600兆円、現在1.4%程度の合計特殊出生率を1.8%に、家族などが介護を理由に退職せざるをえない「介護離職」をゼロにと“大風呂敷”を広げたところで、国民に対する説得力は乏しい。想定される具体策も、女性活躍推進に企業への女性登用の行動計画義務付けなどと同様に、手垢の付いた二番煎じになる可能性は否めない。

実際、成長戦略に位置付けた働き方改革の柱として、高所得者を労働時間規制の対象から外すホワイトカラーエグゼンプション(高度プロフェッショナル制度)の導入を盛り込み、先の通常国会に提出した労働基準法改正案は、安全保障関連法成立に前のめりになったことが影響し、継続審議として棚上げされた。

また、安倍政権の肝煎りで今年7、8月の2カ月間、国家公務員に導入した官製版の朝型勤務「ゆう活」は、定時退庁者の比率が導入開始の時期から終了まで65%にとどまり、かけ声倒れに終わった感は否めない。こうした現実を突き付けられれば、安倍政権が働き方改革や少子高齢化に伴う構造的課題の解決に取り組む本気度も疑わしい。

2017年4月の消費税率10%への引き上げ時の軽減税率導入を巡る対応ぶりと同じく、来年の参院選を意識した点数稼ぎとしか受け取れない。政府は8月の人事院勧告を受け、2016年度から自衛隊などを除く国家公務員全員を対象にフレックスタイム制を導入し、在宅勤務の活用を広げる方針で、「官」が率先して働き方改革に取り組む姿勢を鮮明にしたい意向だ。

しかし、法案提出を予定していた臨時国会の開催は見送られる方向にあり、足踏み状態なのも現実だ。ここにきての民間による働き方改革への取り組みをみれば、国の制度改正を伴わずとも改革は企業自身の努力で可能なことは十分確認できる。企業による人材獲得・確保に向けた働き方改革競争も既に火ぶたが切られており、政府対応は民間に比べ、完全な周回遅れとなっている。

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