少なくとも企業にとっては、ワンショットの広告や販促でそれらエクイティ要素を獲得するのは難しく、日々のマーケティング諸活動を、時間をかけて継続する中でしか得られないものなのだ。つまり、ブランド・エクイティの構築には時間がかかる。
しかも、日々の活動が相互にバラバラでは、得られるものも得られない。たとえば、キャンペーンを打つごとに、商品の名前が違ったり、提示するイメージが違ったりするのではうまくいかない。あるいは、突然ディスカウントして、これまで使ってくれていた消費者の気持ちを逆なでするのもよくない。そして、当たり前の話だが、不良品を出してはいけない。
毎日のマーケティングにおいて、場当たり的に手を打ってしまうと、一時的に売り上げは上がっても、エクイティは下がってしまう。エクイティ蓄積において、脇の甘さは禁物だ。そうならないよう、日頃から注意深く、かつ体系だったマーケティングを心がけないといけない。こうした注意深い体系だったマーケティング活動を通じて、市場において蓄積されていく資産、それがブランド・エクイティである。
このブランド・エクイティを維持し成長させる役割を担うのが、ブランド・マネジャーと呼ばれるブランド責任者である。ブランド・マネジャーは、ブランド・エクイティの構築と長期的維持に対して、責任と権限をもつ唯一の組織人である。
ブランドから利益を稼ぐことは、もちろん大事。だが、利益や売り上げに過度に意識を集中しすぎると、長期にわたる収益源であるはずのブランド・エクイティを毀損してしまう。そうなっては元も子もない。ブランド・マネジャーを置かずにブランドを管理することが難しいと言われるのは、長期を睨んだブランド・エクイティ維持への関心が薄れるためである。
〈三ツ矢サイダー〉テレビCM、(品質編)の狙いとは
ブランド・エクイティを継続的に維持成長させていくために、長期的な視野をもった成長プログラムをもっておく必要がある。その方法として、ブランドに関わる消費者市場を細分化して考えるのが、うまいやり方である。具体的に、〈コカ・コーラ〉とか〈ポカリスエット〉とか〈三ツ矢サイダー〉とかをイメージしよう。
まず、そのブランドの消費者市場を細分化して分類する。「ブランドXを嫌いな人」「ブランドXを好きでも嫌いでもない人」「ブランドXを時々飲む人」、そして「ブランドXが大好きな人」といった具合である。