コスプレ強要に幻滅、退職する外国人社員

公用語化は従来の企業風土を一新する革命的変化をもたらし、その過程でさまざまな新旧の軋轢も引き起こす。グローバル化を進めるある会社で、TOEIC800点という中途採用の要件を難なくクリアして入社した女性社員の松田彩氏(仮名・28歳)が見たのは、日本人社員と外国人社員の文化摩擦だった。「たとえば外国人の新人に日本人上司は『明日、大事な取引先が来るのでケーキを買ってきて』と当たり前のように頼む。しかし、当の外国人社員は、そのようなために入社したのではないと思っている。また、見た目は日本人と変わらない韓国系アメリカ人に、『君って日本語が下手だね』といって笑ったりする。そうしたことに反感を募らせている外国人社員は多い」

ときにはイジメとしか思えない現象も起こる。洋上パーティを開催することになり、体育会系のノリが強いある部長が新卒の女性社員に「当日は全員コスプレ姿をするように」と命じた。「結果的に中止になったが、そのやり取りを見てショックを受けた外国人の女性社員が泣きながら相談にきた」(松田氏)という。同社はアイビーリーグ出身など優秀な若手の外国人を積極的に採用しているが、そうした摩擦に幻滅して辞めていくケースが少なくないそうだ。

英語公用語化はトップの強いリーダーシップなしには進まない。しかし、一気に画一的に推進しようとすれば、現場の混乱も生じる。大手消費財メーカーの人事担当役員は「公用語化は不可避でも、怖いのは社員のモチベーションの低下。年齢構成を踏まえて、必要な部署から漸次進めるなどの慎重な配慮も必要だ」と助言する。

(大沢尚芳、川本聖哉、岡倉禎志=撮影)
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